三森大貴が“諦めた”1軍昇格 チームメートも噂した去就…自ら語った「今年は難しい」

DeNAにトレード移籍することが発表された三森大貴【写真:竹村岳】
DeNAにトレード移籍することが発表された三森大貴【写真:竹村岳】

昨季は102試合に出場も…GMは「出場機会があまりなかった」

 2024年シーズンも最終盤を迎えた頃、三森大貴内野手の姿は筑後にあった。5月末に負った右手人差し指の骨折も癒え、2軍戦で懸命にプレーしていたが、1軍から「吉報」は届かなかった。25歳の表情には少なからず「諦めの色」が浮かんでいた。

 抱いた感情は間違いではなかった。リーグ優勝を果たしたホークスだが、続くクライマックスシリーズ、日本シリーズでも三森が1軍から声をかけられることはなかった。DeNAへのトレードが発表された12月23日、取材対応した三笠杉彦GMも「出場機会があまりないというところもあった」と今回の経緯を説明していた。

 プロ6年目の2022年にはレギュラー格として102試合に出場し、打率.257、9本塁打、36打点、20盗塁を記録。23歳で持ち前のポテンシャルを発揮するなど、将来のホークスを背負う逸材として期待のかかる活躍ぶりだった。昨季も102試合に出場するなど、定位置確保への道は明るいかに見えた。しかし、三森は今年の春先にある“予感”を覚えていた。

「春キャンプの時点で『今年は1軍でプレーするのは難しいだろうな……』とは思っていました」

 今年2月の春季キャンプ。故障など特別な理由があったわけでもなく、三森はB組スタートとなった。第4クールからA組に合流し、開幕戦を1軍で迎えたが、その直後に右手人差し指を骨折。復帰した4月末以降は牧原大成内野手の故障もあってスタメン出場が増えたが、再び5月末に同じ個所を骨折し、戦列を離れた。その後は1軍のグラウンドに戻ってくることはなかった。

 三森は自らを貫く男だ。独特な打撃フォームについて周囲から変えるよう促されたこともあったが、首を縦には振らなかった。「野球選手は結果を残すことが全てだと思っている」と、あくまでスタイルを曲げなかった。その芯の強さは大きな魅力でもある一方、あらぬ誤解を招くことがあったのも事実だ。

 今シーズン終了後には、移籍の噂がまことしやかに流れた。顔を合わせたチームメートからは自身の去就を心配されることもあった。「ホークスにはもちろん感謝はありますけど、もし他球団に行くことがあっても野球をやることには変わりないので」。覚悟はすでに決まっていた。

 中学から地元の埼玉を離れて、青森で孤独と戦いながら野球を続けた。何かを決断する時は、いつも1人で考え抜いた。もともと口数は多くなく、何でも本音を語るタイプではない男は、こう口にする。

「自分がやってきたことが駄目なら駄目で、あきらめもつくので」

 大きな反響が起きた今回のトレード。将来を大きく期待された25歳は、8年間在籍したホークスを離れることになった。それでも昔気質で芯が一本通った三森は、プロ野球界においても間違いなく稀有な存在だ。新天地では「変わらない強さ」で替えの利かない存在となってほしい。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)