「炎上しますよね、僕は」 発言と成績の“ギャップ”…杉山一樹の苦悩「甘すぎた」

ソフトバンク・杉山一樹【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・杉山一樹【写真:荒川祐史】

鷹フル単独インタビュー第2弾…テーマは「取材対応」

 鷹フルがお送りする杉山一樹投手の単独インタビュー。第2回目のテーマは「取材対応」についてです。入団当初はグラブに独特な刺繍を入れるなど、そのキャラクターでファンを楽しませてきた右腕。感じていたのは自身の成績との“ギャップ”でした。

 杉山が自身のグラブにどんな言葉を刺繍するか――。日々の紙面づくりが難しくなるオフに入ると、報道陣にとって1つの興味ごとになっていた。これまでにも「牛一頭」「世界遺産になりたい」「男は鶏胸肉」「潰れてからが筋トレ」といった“謎のセンス”を披露。ファンを喜ばせてきた。

 そんな右腕だが、今年は感情の揺れ動きがほとんど見えなかった。淡々とマウンドに上がり、打者と対峙する。試合後の取材対応も極めて落ち着いたものだった。どのような心境の変化があったのか。本人が明かしたのは「発言が甘すぎた」との“反省”だった。

「去年までの5年間は、本当に“ちゃらんぽらん”だったと思います。まず受け答えができていなかったですよね。発言と行動が合っていないし……。甘いですもんね、発言が。上辺だけの会話をしちゃっていたなと」

 グラブへの刺繍をはじめ、2019年に選手寮へ入る際には洗濯カゴを新幹線の車中から手に持っていたエピソードも披露するなど、その天然ぶりが注目されることも多かった。あくまで「素」だと言う右腕。それでも、報道される内容と本来の自身の姿に強い違和感を覚えることがあった。

「僕はあまり記事とか読まなくて、ほかの選手から『こんな記事出てるよ』と言われて内容を知ることが多かったんですけど。それを見るたびに「こんなこと言ってないけどなあ」みたいなことが多くて……。これまでファンにとっては煙たがられるようなパフォーマンスを出していたし、炎上しますよね、僕は」

 これまでのキャラクターに引っ張られ、杉山が話した言葉に「色」がついた内容で記事が出されることもあった。それでも、自分の成績を考え、「違います」と発信することはできなかった。「取材には対応するけど、もう『いらんことは言わないでおこう』みたいな感じ」と、少しずつ笑顔は消えていった。

 自らの投球に集中した今季は、チームトップタイの50試合に登板し、4勝14ホールド1セーブ、防御率1.61と、軒並みキャリアハイの数字をマークした。「ちゃらんぽらんだった生き方をとにかく丁寧にしようと。野球でも私生活でも徹底できたことが大きかったです」。落ち着いた口調でそう振り返った。

 自身の成績と発言のギャップは少しずつ埋まっていきつつある。天真爛漫なキャラクターも、間違いないく杉山の魅力の1つだ。来季はより笑顔が増えることを願うだけだ。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)