鷹フルでは4日連続で正木智也外野手の単独インタビューをお送りします。第2回のテーマは、近藤健介外野手への思いです。憧れという天才打者との距離感を縮めてくれたのは、まさかの「くじ引き」でした。今シーズンで一番辛かった期間についても告白。「何をすればいいんだろう」と語った苦悩にも迫ります。
プロ3年目の今季は開幕を2軍で迎えた。4月4日に昇格を果たしたものの、与えられたのは代打による2打席のみ。安打を放つことができずに同15日に2軍へ降格。6月21日に再昇格を果たすと、その後は1度も登録を抹消されることなく、リーグ優勝にも大きく貢献した。そんな正木が明かした「一番辛かった」期間とは――。
「4月の2打席で打てなくて、2軍に降格した以降の1か月くらいが一番辛かったです。その期間は全然打てなかったですし、その時は1軍もめっちゃ勝っていたので。(試合に)出ているメンツもすごかったじゃないですか。『このメンバーの中で試合に出られるのかな』って思いました。しかも自分の調子も悪かったので。どんどんネガティブな方向に行ってしまったし、その1か月は辛かったです」
4月を終えて18勝6敗2分け。5月も13勝9敗と、チームは順調に貯金を積み重ねていた。一方、自分がいない中で1軍が勝ち続けるのは、ファームにいる選手にとっては歯がゆいものだ。正木も「練習も上手くいかないですし、何をすればいいんだろうという時期だったので。そこはすごくキツかったです」という。隙のない戦いが続いていた上に、レギュラーも固まっていた当時の1軍。そんな状況に前向きな気持ちを抱けずにいた。
「1軍で出られるのかな、って思いました。僕とかは特に『後からいく選手じゃない』って言われていたので、先発で出るしかないと思ってやっていたんですけど。スタメンのメンツが『みんな日本代表だった人ばっかりじゃん』みたいな感じだったので。そこに、いけるのかなって。その時は特に打てなかったので、どんどんそういう気持ちになりました」
1番から周東、今宮、柳田、山川、近藤、栗原……。過去に侍ジャパンを経験したことのある先輩ばかり。圧倒的なラインナップは、若鷹にとっては高すぎる壁だった。
4年ぶりのリーグ優勝を掴んだ2024年。1軍にいれば、主力選手たちとの距離感も自然と近くなっていく。先輩たちの姿に正木は「本当に全員すごいです。マジでみんなすごいと思います」とした上で、「1番は近藤さんですね」と挙げた。
「あの人、普通に試合でヒットを打った日とかも、その後に室内でバッティングしているし。今年は6番を打たせてもらって、近藤さんの打席をネクストから見ることが多かったので。間近で見ていて『このボールもファウルにするんや』『うわ、これ見逃す!?』みたいな。それは感じました。2回に1回くらいは塁にいますし、技術的にも何もかも、本当にすごいなと思いました
4月15日に2軍降格となり、「YouTube」の動画から打撃を向上させるためのヒントを見つけた。特に近藤を参考にしたという一方で、なかなか本人と深い会話をする機会がなく、自分からも飛び込めずにいた。最大のチャンスは、11月1日に訪れた。DeNAとの日本シリーズの最中だった。2勝3敗という状況で、横浜への移動日。栗原が先導して、野手会が開催された。具体的な状況について、正木が回想する。
「シーズンが終わるまでは正直あまり(近藤に話を)聞けなかったんですけど、この前、横浜であった野手会は座席が抽選だったんですよ。僕は5番目くらいにお店に着いたんですけど、引いたらもうそこにギーさんと吉康が座っていました。他は全然空いているのに。ギーさんと一緒やって思っていたら、近藤さんが次に来て、僕の前に座ったんです。嬉しかったですね」
チーム運営部の柿木映二さんが野手会のためのグループLINEを作り、そこに正木も招待された。くじ引きという“天運”で、近藤とも柳田とも近くの席になった。「くじ引きじゃなかったらあの席にならないというか。もしかしたら川村とかの方に行っちゃっていたかもしれない(笑)。内容はあんまり言えないんですけど、その時にギーさんとか、近藤さんから考え方、技術のことを聞きました」と、充実の時間を過ごした。焼き肉を食べながら先輩にもらった助言を生かすため、今は秋季キャンプで汗を流している。
「今年は山川さんとかにもご飯に連れて行ってもらって、その時にたくさん話を聞けたので、いい1年だったなと思いました」。チームメートとの関係性も、より深くなった。先輩たちとの時間を大切にしながら、2025年はもっと自分のバットでホークスを勝たせたい。