柳田悠岐に寄り添った4か月 31歳“新米”コーチが感じた「一流と呼ばれる理由」

ソフトバンク・柳田悠岐【写真:竹村岳】
ソフトバンク・柳田悠岐【写真:竹村岳】

20日の2軍戦で復帰…柳田悠岐が感謝を口にしたのは「中谷コーチ」

 3か月半にわたるリハビリ期間にも、「一流」と呼ばれる理由は確かにあった。どんな時も変わらない、ギータらしい姿だった。

 ソフトバンクの柳田悠岐外野手が20日、ウエスタン・リーグのくふうハヤテ戦(タマスタ筑後)で実戦復帰を果たした。2打数無安打で、途中交代。約4か月ぶりとなる実戦に「今は2軍も優勝争いをしていると聞きましたし。今日は打てなかったけど、打てるようにしていきたい」と汗を拭った。長かった道のりを、隣で見守ってきたのが、昨年はホークスジュニアアカデミーのコーチを務めていた中谷将大リハビリ担当コーチ(野手)だった。ギータから感じた「一流と呼ばれる理由」――。自らの目線で語った。

 柳田は5月31日の広島戦(みずほPayPayドーム)で内野ゴロを放った際に、右ハムストリングを痛めた。診断結果は「右半腱様筋損傷」。首位を走っていたチームから、大黒柱が姿を消すことになった。中谷コーチは2022年オフに現役を引退し、今季が指導者1年目。いきなり「ホークスの顔」であるギータを、自分の管轄として預かることになった。どんな心境を抱きながら、柳田とともに復帰を目指してきたのか。

「やれることはしっかりとできたので。ベストパフォーマンスに持っていけることが一番大事だったし、そこへのサポートはできたかなと思います」

 球団から柳田の診断結果について発表があったのは6月1日。「全治はおよそ4か月」と、明確に記されていた。仮に復帰ができてもシーズン最終盤の見通しだった。それでも、柳田の姿は普段と変わらなかった。「浮き沈みはほとんどなく、毎日いいモチベーション、いい練習をしていたので、一流の選手はこれだけやるんだって思いました」と、中谷コーチにとっても学ぶものばかりだった。一流と呼ばれる所以を、どんな姿に感じたのか。

「まず一番は、手を抜くことが絶対にないです。試合に入っていくことを目標にして過ごされている印象はありました。僕もサポートするのは間違いないんですけど、すごく勉強になりますし、その中でもしっかりと同じくらいの熱量でいられたらと思っていました」

 1日1日を大切にしながら、しっかりと復帰に歩むギータに置いていかれないように、「同じ熱量」を貫いた。今季、リハビリ組には中村晃外野手や牧原大成内野手といった主力がいた期間もあり、特に柳田と過ごす時間が長かった。一流選手の考えにたくさん触れて、「めちゃくちゃ大きな期間になりました。考え方とか、しゃべる機会も多かったので。そういうふうに思ってやっているんだというのを身近で感じられました」と、毎日が勉強だった。

 柳田からは「マー君」と呼ばれていた。「現役の時も同じように呼ばれていましたよ。同じように接してくれました」と、飾らない姿はリハビリ組にいても変わらなかった。「早く復帰してほしいのが一番でしたし、そこ(復帰)に向けて全力でサポートして、持っていくことが一番の目標でした」。もう1度グラウンドに立てる日を、中谷コーチも一緒に目指してきたつもりだ。複雑な感情も、もちろん期待も、全てを抱えて復帰戦を迎えた。

「全部(心配する気持ちも安心する気持ちも)ありますけど、今日、(復帰)初日が大事だと思うので。今日1日をまずは元気にというか、打席に立つことができたらいいなと思いますし。試合に入っていけることが一番嬉しいですし。そこが一番です」

 柳田自身も「リハビリ中にね、中谷コーチがひたすら投げてくれたので。そんなに違和感はなく入れたと思いますし。中谷コーチに感謝しています」と頭を下げた。31歳の若きコーチを、たっぷりと成長させてくれた。周囲にまで大きな影響を与える男の存在は、やっぱりホークスに欠かせない。

(飯田航平 / Kohei Iida)