大山凌と岩井俊介…敗戦後に2人だけで会話 9回を託されたルーキーたちの“本音”

降板するソフトバンク・大山凌【写真:荒川祐史】
降板するソフトバンク・大山凌【写真:荒川祐史】

2人で5失点も…芽生えた自覚「逆に良い経験」

 ルーキーたちの胸に深く刻まれる1敗となった。ソフトバンクは4日、日本ハム戦(みずほPayPayドーム)に5-8で敗れた。3点リードで迎えた9回、日本ハム打線に6点を奪われて逆転を許す、まさかの展開となった。

 9回のマウンドに上がったのは松本裕樹投手だった。しかし、先頭打者に四球を与えたところで、右肩のアクシデントにより降板。緊急登板となった大山凌投手がその後3点を失って同点とされると、2死二塁で登板した岩井俊介投手が水谷に勝ち越しの適時打を許し、チームは逆転負けを喫した。

 降板後、大山は悔しさを堪えきれずにベンチで涙を流した。小久保裕紀監督は試合終了直後の囲み取材で「ルーキーたちに責任はないんで」とコメントし、その後チーム全体でのミーティングと、投手陣だけのミーティングが行われた。岩井は落ち着きを取り戻した後に、大山との会話があったことを明かした。「いっぱい話しました」。そこで語られたルーキー2人の本音とは――。

「いいところで投げさせてもらった経験を今日はできたので。さっきも(大山と)いっぱい話したんですけど、『あそこで投げて、経験できて逆に良かったな』みたいなことを話しました。この経験を活かして、次はやり返したいです」

 こう語ったのは岩井だ。どちらからでもなく、自然とこのような会話になった。「ここから俺らで頑張るぞという気持ちになりました」。悔しい思いを“良い経験”だと捉え、一緒に前を向いた。

 苦しい場面での登板となったルーキーに対して、倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は「ああいう場面で申し訳なかったなという気持ちの反面、すごくいい経験をしたんじゃないかなって思いますね」と話したが、その期待はしっかりと伝わっていた。

 ミーティングでも小久保監督から2人に向けた言葉があった。「『大山も岩井もお前らは悪くないから責任を負うな』みたいな感じで、みんなの前で話されて。戦い方を休み明けに考えておくから、と監督が言っていました。『お前らは何も悪くない』みたいな」。その言葉も気持ちを立て直すきっかけにもなった。

「あまり覚えていないんですけど、マツさん(松本裕)からは、『ごめんな』って。そんな言葉だった気がします。大関(友久)さんも背中をポンポンと叩いてくれました」。頭が真っ白になった状況で、右肩痛による降板を余儀なくされた松本裕ら、先輩投手からもたくさんの声がかけられた。

 大山の悔しさはもちろん岩井にも伝わっていた。「もうなにがなんでも流れを止めるって感じで投げたんですけど……。(勝ち越し打を浴びた水谷に対して)ツーストライクと追い込んだのに、もったいなかったです」と、ピンチを凌ぎきれなかった悔しさを隠すことはなかった。

 それでも、この敗戦は2人を必ず強くするだろう。「ここから俺らで頑張るぞという気持ちになりました」。人知れず涙を流した大山凌と、この試合まで5試合を投げて1人のランナーも許さない投球をしてきた岩井。これから先のプロ野球人生においても、悔しさを忘れることができない試合になったはずだ。この敗戦を糧に、チームを勝利に導く選手へと成長してくれるはずだ。

(飯田航平 / Kohei Iida)