ソフトバンク、ロッテでプレーしたくふうハヤテの福田秀平外野手が1日、今季限りでの現役引退を表明した。18年間の現役生活に終止符を打つことを決めた福田が「鷹フル」の単独インタビューに応じ、2007年から2019年までプレーしたホークスとホークスファンへの思いを語った。静岡で暮らす家に重ねた原風景とは……。
5年経っても、ホークスへの思い入れは深い。18年間の現役生活に終止符を打つことを決めた福田はプロ入りから13年にわたってプレーした古巣を「親みたいな感じですね」と表現する。プロで生きていくためのイロハを学び、18年続けた現役生活の礎を築いた場所だからだ。
「全てを教えていただいた場所ですね。何もわからない状態でプロに入って、当時の王監督をはじめ、秋山監督、工藤監督とやらせていただき、鳥越さんだったり、いろいろなコーチもいて、そこでホークスの野球道っていうのを叩き込んでもらった。僕の野球道っていうのは基本的に全てホークスで教わったこと。この野球観をこれからも大事にしたいなと思いますし、ホークスには感謝しかありません」
現役時代の一番の思い出として、あえて苦い記憶を挙げる。2010年5月22日の広島戦。プロ初スタメンを果たし、プロ初安打、初打点となる2点適時二塁打も放ったが、それが理由ではない。7回に中堅へのライナーを追った際に転倒。2点適時打にしてしまい、この直後に先発の和田毅投手は降板。福田自身も途中交代を言い渡され、記念となるはずの試合は、一瞬で悪夢と変わった。
「和田さんには申し訳ないですし、いい思い出とは言えないですけど、あれがあったからこそ、ここまで来られたのかな、と思います。もう2度とこんなことはしないっていうのを誓って、外野を守る時は足が絶対もつれないように、必ずモモ上げや、ジャンプをして守るように、今でも教訓になっています。同じ失敗は2度としない。同じ失敗を繰り返していたらこの世界で生きていけない、そういうふうに思わせてくれた一件でした」
「1年後か2年後ぐらいに和田さんと食事に行った時に、『本当に上手くなったね』って言っていただいて。自分にとってすごく大きな言葉で糧になりました。小久保さんとはロッカーが隣で『お前はなにでメシを食っていくんや』と話をしていただき、走塁と守備に関しては誰にも負けるなって、他の先輩方にも言っていただいた。何とかそこで頑張っていこうと、自分なりに励んだ結果、こうやって18年できたのかなって思うので、本当に関わっていただいた監督、コーチ、先輩方には感謝しかないなと思います」
守備と走塁で信頼を勝ち得て、自身の立ち位置を確立させた。2011年から2015年にかけて、当時の日本記録だった32連続盗塁成功を達成し、ここ一番での勝負強さや怪我を恐れないガッツあふれるプレーはファンの胸を打った。“エースキラー”とも称され、大谷翔平投手と山本由伸投手から複数本塁打を放っているのは福田と、親友の柳田悠岐外野手だけ。記憶に残る選手で、人気も根強かった。
福田はくふうハヤテ入団を機に、静岡で単身、暮らすようになった。若い選手が皆、寮生活を送る中で、球団から1人暮らしを許されていたが、あえて寮で寝食をともにすることを選んだ。「もう1回、イチからやろうっていう気持ちだったんで」。13年ぶりの寮生活。ひと回り以上、年の離れた後輩たちと暮らす日々は新鮮でもあり、学びの連続だった。
シーズン中に寮が変わり、他の選手たちがそちらに移り住んでも、福田は1人、古い寮に残った。「福岡の西戸崎に感じが似ているんですよ。目の前が海で、対岸には町がある。西戸崎も海の中道があって、対岸には福岡の街やPayPayドームが見える。同じような場所ですごく居心地が良くて、気に入ってしまったんですよね」。その景色が自分の原点を思い起こさせてくれる場所だったからだ。
ハヤテでプレーしたこの半年間、思い出したのもホークス時代の先輩たちの姿だった。「小久保さんであったり松中さん、(川崎)宗さん、松田さん、本多さん、柳田……。こういう時はどういう風に言うかな、とか考えながら行動したりしましたね。歳の離れている若い子たちにどう声かけをしたらいいのかな、とか、尊敬している先輩方を思い出しながら、イメージしながら一日一日取り組んできました」。
将来、なんらかの形でホークスに復帰することを願っているファンも多いはず。その可能性については「それは僕が決めることではないですし、今後のキャリアっていうのはゆっくり考えていきたい」という。第二の人生には無数の選択肢がある。「野球は好きなんで、野球に携わっていく仕事は何かしらしたいと思う反面、ちょっと違う世界を見てみたい思いもあります。野球しかしてこなかった人生なんで、視野を広く、今後の人生をゆっくり考えたいですね」と、フラットに考えていくつもりだ。
ホークスで13年過ごし、2019年オフには国内FA権を行使してロッテに移籍。今季はくふうハヤテでプレーしたが、ユニホームが変わっても、福岡から千葉に、静岡に、駆けつけるホークスファンがいた。支えてくれたファンへ、心からのお礼を伝えたかった。「こうやって最後の最後まで応援してくださって、感謝しかないです」。