山川に本塁打がない直近24試合は14勝9敗1分け…チームの好調が「救い」
24試合ノーアーチと我慢の日々が続く山川穂高内野手だが、その表情は決して暗くはない。「こうやってカバーしてくれてるうちに、早く自分のバッティングを取り戻さないと…」。今季ここまで65試合で4番に座る主砲が感謝を口にした相手は、同じく全試合で自身の後ろを打っている近藤健介外野手だ。
4番山川、5番近藤が2024年小久保ホークスの「心臓」だ。3番に座っていた柳田悠岐外野手が故障で離脱したものの、不動の4、5番はやはり脅威だ。山川にアーチが生まれたのは2打席連発をマークした5月22日の楽天戦(京セラドーム)が最後。それでも、以降の24試合は14勝9敗1分けとチームは勝ち越し。主砲の不調を感じさせない戦いが続いている。
「チームが勝っていることが何よりもの救いです」。そう口にする山川にとって、頼もしい限りなのは近藤健介外野手の存在だ。6-6で引き分けた23日のロッテ戦も、1-1の4回に山川が中前打で出塁すると、続く近藤が11号2ランを放って一時勝ち越しに成功した。小久保裕紀監督が開幕から一度も手を入れていない4、5番コンビ。山川が“相棒”について言葉を口にした。
「近ちゃんがこれだけ助けてくれて……。もちろん僕のために打っているわけじゃないですけど、すごく頼もしいというか。これで僕がホームランをバンバン打つような状態になったら、もっともっと点が取れると思うので」
今季からホークスに加入した山川にとって、近藤と同じチームでプレーするのは初めてだが、その類まれなき実力は以前から感じていた。「誰がどう見ても、技術は明らかに高いので。芯に当てる能力は球界でもトップだと思う。吉田正尚(レッドソックス)か近ちゃんかっていうくらい。(侍)ジャパンでも近ちゃんは一生打っているような印象しかないですよね」。
昨季本塁打(26)、打点(87)の2冠に輝いた近藤は、今季も11本塁打、41打点で、いずれも山川(12本塁打、49打点)に次ぐリーグ2位の数字をマーク。圧巻の打率.355も合わせ、「3冠王ペース」と言っていい成績だ。これまで3度の本塁打王に輝き、通算230本塁打を誇る山川は、近藤の“猛追”をどう感じているのか。
「もちろん、このまま打たんかったら追いつかれるし、抜かれるんですけど。自分のペースで打てるように戻りさえすれば、それはいけると思います。(タイトル争いは)初めてではないし、全ての経験がそうですよね。めちゃくちゃ打った時も、めちゃくちゃ打てない時も山ほど経験してきているので」
アーチストとしての誇りが感じられた一方、あくまで近藤はタイトルを争う敵ではなく、チームメートだという意識が本意なのだろう。「切磋琢磨してと思っていますけど。近ちゃんからしたら、僕なんて眼中にないくらいじゃないですか」。山川はそう言って笑顔を見せた。
自身はノーアーチが続くが、焦りはない。「急に絶好調になるっていうのは多分、難しいと思うので。チームが勝っている間に早く自分のバッティングを取り戻して。取り戻せていないうちは、今日(23日)みたいにできることをやっていくのが1番いいかなと」。山川が本調子に戻った際には、「不動の4、5番」がより猛威を振るうことになる。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)