「絶対にここ一番で中村晃」 小久保監督が明かす絶大な信頼…後輩に信頼される明確な理由

ソフトバンク・小久保裕紀監督(左)と中村晃【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・小久保裕紀監督(左)と中村晃【写真:荒川祐史】

開幕前に伝えた「唯一無二になれ」…出場機会が限られるのも「彼の場合は編成」

 ソフトバンクの小久保裕紀監督が、鷹フルの単独インタビューに応じた。テーマは「中村晃」。チームの大型補強の影響もあり、主に代打での出場が増えている中村晃外野手。開幕前に指揮官がかけた「唯一無二になれ」という言葉の真意に迫った。その存在感について「絶対にここ一番は中村晃」とキッパリ言う。絶大な信頼を寄せる理由を、明確に語った。

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 小久保監督自身は「『唯一無二』って個人的に話したかな……」と振り返りつつ「『替えのきかない選手になりなさい』って話はしました。『プロフェッショナルであれ』って」と、自分の言葉で説明する。今季成績は38試合に出場して打率.188、0本塁打。出場機会が限られようとも、揺るがない信頼があるのは「彼の場合は、編成の問題じゃないですか」と、しっかりと“事情”を理解しているからだった。


単独インタビューに応じたソフトバンク・小久保裕紀監督【写真:飯田航平】

「オフに山川を補強して、ウォーカーを補強して、それで被っているポジションの人が控えに回るのはこの世界では普通にあること。本来、補強がなければ試合数くらいのヒットを打つ選手を回しているわけなので。ものすごくそこは、なんというか、彼に対しては気配りしましたね。今もしています」

 2020年のオフ、1軍ヘッドコーチに就任した時に小久保監督は「扱いづらいベテランを作らない」と宣言した。その思いは、1軍監督になっても同じ。「コミュニケーションは取ります。役割を与えて“ここ一番”で使うようにすること。絶対にここ一番で中村晃っていう、いつ出そうかっていうのは試合後半のウエートを占めるところなので」。代打の成績は23打数5安打、打率.217。調子や状態ももちろん大切だが、左右されることなく、大事な場面を託し続けることで中村晃にリスペクトを伝えている。

 開幕以降、代打としての調整にも工夫を重ねてきた中村晃。時にはアーリーワークから参加して、バットを振る。34歳の職人の姿には、周東佑京内野手が「あれだけヒットを重ねてきて試合に出てきた選手ですし、参考になる部分は本当に多いです」と言う。緒方理貢外野手も「僕がベンチ裏に行った時もずっとバットを握って、振って、ピッチャーのことを見てってやられています。そういう姿を見ていたので、ヒットを打った時は自分のことのように嬉しいです」と言うほどだ。

 後輩選手を含めて、チーム全体に与える影響。小久保監督が、見逃しているはずがない。

「選手はみんなわかっている。選手が『晃さんがスタメンじゃない』『晃さんがベンチでどういうふうに準備している』『どういう目をしている』っていうのは、選手が一番感じている。それが晃クラスの選手がそういうことをやっていて、そこまで行っていない選手がどう感じるかと言ったら『晃さんでもああいうふうに準備するんだから、自分たちもしよう』ってなりますよね」

ソフトバンク・小久保裕紀監督(左)と中村晃【写真:竹村岳】
ソフトバンク・小久保裕紀監督(左)と中村晃【写真:竹村岳】

 小久保監督が現役引退したのは2012年。晩年は少しずつ代打としての出場機会が増えていったが、自分自身が経験したからこそ「難しいですよ」と、一振り稼業の大変さを痛感している。「難しいし、そういう人もスタメンの時ってあるじゃないですか。非常に難しいとわかった上でその役割をこなしてもらっている。だから余計に、気は配りますね」。数字に表れない部分まで含め、どこまでも中村晃というプロ野球選手をリスペクトしている。

 6月1日には柳田悠岐外野手が登録抹消され「右半腱様筋損傷」と診断された。大黒柱の離脱に、チーム状況も大きく影響を受ける。中村晃について、指揮官は「勝つために、今の晃のポジションは代打の切り札として一番手の選手。その勝負手をいつ出すのかっていうのは試合の流れ的には読んでいます」と話していたが、スタメンで出場する機会も増えるだろう。今こそ、頼りになるレフティスナイパーの力を借りる時だ。

“右腕”である奈良原浩ヘッドコーチは、小久保監督の采配を「『だから任せよう』って思うだけの準備を選手がしているということ。それを監督はしっかりと見ている。そういうことで信頼関係じゃないですけど、今はいい方向に行っている」と表現していた。采配ひとつ、立ち振る舞いひとつにも、選手へのリスペクトを込める。小久保監督はベンチでどっしり座り、腹だけを決めている。

「だって、できることって祈ることしかないじゃないですか。僕が打席に立つわけじゃないので。あとは、目の前の試合には勝たないといけないのでそこも大事なんですけど、やっぱりその選手の将来とか、チームの将来とかを抜きには語れない。ここはちょっと我慢してでもっていうのはありますね」

 どこまでも選手を信じる小久保監督だから、男にしたい。一緒に優勝したいと、心から思える。

ソフトバンク・中村晃【写真:竹村岳】
ソフトバンク・中村晃【写真:竹村岳】

(竹村岳 / Gaku Takemura)