藤井皓哉が抱えていたモヤモヤ 開幕後に露呈…欠けていた2年前の“気持ち”

ソフトバンク・藤井皓哉【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・藤井皓哉【写真:荒川祐史】

4月7日に1軍登録抹消

 ソフトバンクの藤井皓哉投手がファームでの再調整を続けている。6日の楽天戦(楽天モバイルパーク)で1イニングを投げ、1安打2四球2失点。味方が直後に2点を返して結果的に勝ち投手になったが、本来に姿ではないことは明らかだった。小久保裕紀監督、倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)ら首脳陣は藤井の再調整を決定。翌7日に出場選手登録を抹消された。

 ファームでの登板はすぐに訪れた。10日にタマスタ筑後で行われたウエスタン・リーグのオリックス戦で最終回に登板し、3者凡退に抑えた。2三振を奪う投球に「やりたいことは、比較的できた方かなと思いますし、1軍の登板よりは、遥かに良かったと思います」と、手応えを口にしていた。

 オープン戦は4試合に登板して失点、防御率2.25とまずまずの成績を残し、今季も勝利の方程式の一角を担うことが期待されていた。だが、藤井本人は結果とは裏腹に、感覚的な部分でモヤモヤを抱えていたという。

「オープン戦期間中、結果はすごい良かったですけど、自分の中ですごくモヤッとする部分もあって。それでさらによくしよう、よくなりたいっていう、そういう思い、必要以上に考えてしまったりとか……。傍から見ればいいかもしれないですけど……」

 自身が懸念していた違和感は、開幕後すぐに結果として現れてしまった。計4イニングを投げて7四球。制球を乱すなど、本来の投球ができなかった。「自分の中ですごいギャップがあって……。それで考えすぎて、色々やってしまったので、そこが良くなくなってしまった原因なのかなと思う」。状態を上げようと試行錯誤したことが裏目に出た。

 開幕直後でのファーム調整に悔しさはある。ただ、今取り組むべきことが明確だからこそ、藤井の表情に暗さはない。「1番はやっぱり頭の整理をすることです。考えすぎていた部分とか色々あったので、もう一度しっかり整理して、バッターと勝負するっていうのをテーマにやっています」と、自身の投球を見つめ直す機会だと捉えている。

「なぜ2022年は良かったのか、どういう感じで投げていたかっていうのを振り返った時に、やっぱり純粋にバッターと勝負をしていた。それが今はバッターとの勝負じゃない部分も出てきてたので。もう一度シンプルな気持ちでやるということを、抹消されてから考えています」

 取り戻したいものがある。キャリアハイの55試合に登板し、5勝1敗22ホールド、防御率1.12の好成績を残した2022年の感覚だ。2020年オフに広島を戦力外になり、NPBの舞台から離れるも、育成選手としてホークスと契約。すぐさま支配下を勝ち取った年を振り返ると、ガムシャラに打者との対戦に集中することができていた。その頃の気持ちが薄れてきていたのでは、と分析した。

「フォームに関しては、抹消されてから整理がつきました。(登板間隔を)空けない方が自分にとってはいいかなというか、自分の中で、マウンドに立った時に自分と勝負してた。対バッターと勝負していくためには、実戦で数多く投げた方が自分のためになるかなと思ったので、早い段階から投げさせてもらうようにしてもらいました」

 取り戻したいものが明確だからこそ、抹消されてすぐに登板を志願した。「ゲームで使えるボールの確率を増やすというところが1番なので、そこを考えながらやっていきたいと思います」。ファーム降格は自身の状態を立て直すための期間。しっかりと前を向き取り組む藤井の姿があった。

(飯田航平 / Kohei Iida)