川村本人も驚くヒロイン抜擢 逆転弾の柳田ではなく…西田広報の機転も効いた舞台裏

ソフトバンク・川村友斗【写真:矢口亨】
ソフトバンク・川村友斗【写真:矢口亨】

プロ初スタメンで初打点と初安打「一生に一度しかない日なんで」

 主砲が一振りで試合を決めた。6日に楽天モバイルパークで行われた楽天戦。8回に決勝の逆転2ランを放ったのが、柳田悠岐外野手だった。

 6回までリバン・モイネロ投手、荘司康誠投手の両軍先発が無安打投球を続ける投手戦になった。7回に初スタメンだった川村友斗外野手の犠飛でついに先制。その裏、藤井皓哉投手が2つの四球から2点を奪われて逆転を許した。

 1点を追いかける展開となった8回、1死から周東佑京外野手が四球で出塁すると、川瀬晃内野手がバントで送って2死二塁に。ここで打席に立った柳田は、楽天2番手のニック・ターリー投手の初球を捉え、右中間スタンドに打球を叩き込んだ。「ヒットを打てればいいなと思っていたんですけど、たまたま角度がついて(フェンスを)越えてくれたんで、よかったです」。起死回生の逆転2ランだった。

 チームは9回に川村がプロ初安打となる適時打を放つなど、2点を追加。守護神のロベルト・オスナ投手が1点差まで詰め寄られたものの、辛くも逃げ切って3連勝を飾った。逆転の一発を放った柳田が文句なしにこの日のヒーローだった。だが、試合後にヒーローインタビューを受けたのは、初スタメンで初打点、初安打をマークした川村だった。

 なぜ柳田ではなく川村になったのか?

 試合ごとにヒーローインタビューの選手を決めている西田哲朗広報はこう明かす。「一生に一度しかない日なんで。柳田さんにも『文句なしに柳田さんがヒーローなんですけど、初安打も打ったので川村でいいですか?』って聞きました。そうしたら柳田さんも『もちろん』と」。2人の思いで川村に白羽の矢が立った。

 川村にとって仙台は仙台大時代を過ごした第二の故郷。偶然にも両親も観戦に訪れていた試合で、初スタメンだけでなく、初打点、そして初ヒットもマークした。チームも勝ってヒーローインタビューもある。そんなタイミング、一生に一度あるかないか。西田広報、そして柳田の機転で、開幕前に支配下を掴んだ若武者が“晴れ舞台”に立つことになった。

 川村自身も「ギーさんだと思っていました」と驚きだったヒーローインタビューだが、「大学4年間ここで育ったので良かったかな、と思います」と語り、この上ない思い出になったことは間違いない。川村を何度も食事に連れて行っている柳田も「もう今日は川村ですよ。おめでたい日なんで。そういう日に勝ててよかったです」と、我が事のように喜んでいた。

 序盤はなかなか投手陣を打線が援護できなかった。それだけに柳田は「モイネロも頑張っていましたし、藤井も、マツ(松本裕)も、オスナもみんないつも頑張っているので、何とかしたい気持ちでしたね」と思いを口にする。チームが勝てばいい。そんな柳田のスタンスを象徴するかのような1試合だった。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)