ドラ1入団→育成“降格”で味わう恥辱 「ちょっと歩きにくい」佐藤直樹が吐露する心中

ソフトバンク・佐藤直樹【写真:竹村岳】
ソフトバンク・佐藤直樹【写真:竹村岳】

キャンプ地には大勢のファンも…「ちょっと歩きにくい」

 ソフトバンクのB組は27日、九州アジアリーグの宮崎サンシャインズと練習試合を行い、14-2で勝利した。中でも際立った活躍を見せたのが、佐藤直樹外野手。「1番・中堅」で出場し、3打数3安打の結果を残した。昨季終了後に戦力外通告を受け、育成契約に。2019年のドラフト1位で入団して以来、背負ってきた番号は30番から138番へと変更となった。育成契約となった現在の心境と、背番号30への思いを包み隠さずに語った。

「今日は良かったです。でも相手ピッチャーのレベルが上がってきたときにどうなるのかな、という感じです。徐々に良くはなってきていると思います」。キャンプも終わり、練習試合など実戦が増える中で好調をキープしている。「戦力外になってからノックを一切やっていませんでした……」と、バッティングに重きを置いてきた成果が出てきているようだ。

 17日のセガサミーとの練習試合ではホームランを打つ活躍を見せた。しかし、自身の中ではホームランを打った17日よりも、この日の内容の方が納得できたという。「この前よりいいですね。あれ(ホームラン)はたまたまかなという感じだったので、あまりバッティングの感じは良くなかったです。今日の試合で、いい感覚ができたので、それをプラスに変えていけたらなと思います」。打った安打はすべてはライト方向。「今やってることができてると思います」と、センターからライト方向に打つ意識を持って打席に入り、イメージ通りの結果に納得の表情を見せた。

 1日から始まったキャンプでは朝早くから体を動かし、遅くまでバットを振る姿が何度もあった。この日も練習試合後にウエートトレーニングと素振りを行い、自分を追い込んだ。そこまでストイックになるのは、去年までとは違い、背番号が3桁になったことによる悔しさがあるからだ。

「去年とは全然違いますね。本当にその分の重さがあるなっていうことと、ちょっと恥ずかしいではないですけど、ファンの前を歩くときも、『ちょっと歩きにくいな』とか、そういうのはあります」。育成契約となり「138」を背負うようになったことでこれまでとの違いを実感している。これまでは普通に応じていたサインも「書きたくないというか、書いてあげたいんですけど、番号書くときにちょっと……」と、複雑な思いを抱えながらペンを走らせている。

「番号を見るだけでもちょっとアレですし……。NPBの選手会のミーティングがあった時とかに『支配下選手だけ残ってください』と言われたり、そういう時に『あー育成か』とか、そういうところでやっぱり支配下がいいなと思います」。ユニホームの洗濯をする際に背番号を目にするなど日々の様々な場面で支配下選手との違いを実感する。その度に自分が育成選手になったことへの悔しさと、支配下への思いが大きくなる。

 現在、佐藤直が付けていた30番は空き番のまま。「それしか考えていないです。開幕までに……」。支配下に戻り、再び30番を背負いたい思いが溢れ出る。今年は支配下登録の枠が残り8枠と、去年に比べると5枠も多い。それでも「枠の多さというよりは、もう普通にできることをアピールする。今日みたいなのがベストですし、たまに長打とか出たらいいなという感じです」と、必死にプレーを続けていくつもりだ。

「怪我せずできたことが良かった。今年は自分で考えて練習できる時間が多かったので、そういった面では充実したキャンプが過ごせたと思います」。支配下から育成になったキャンプをこう振り返った。その上で「オープン戦に向けてしっかりアピールして、開幕までにしっかり呼ばれるような結果を残して行きたいなと思っています」と、支配下に返り咲くことだけを考えている。残りの8枠に食い込むため、佐藤直は更なる結果を貪欲に求めていく。

(飯田航平 / Kohei Iida)