苦悩の2年間で失った“好調のサイン” 打球直撃も…風間球打が見せた復活への気迫と手応え

DeNAとの練習試合で登板したソフトバンク・風間球打【写真:飯田航平】
DeNAとの練習試合で登板したソフトバンク・風間球打【写真:飯田航平】

DeNAとの練習試合で打球直撃も「楽しく投げられました」

 今季にかける思いが全身から溢れ出ていた。22日に行われたソフトバンクB組とDeNAとの練習試合で、3番手としてマウンドに上がったのが、風間球打投手だった。2021年のドラフト1位で入団するも、怪我に苦しみ、未だに1軍登板はない。もがき続ける右腕が今季にかける思いと手応えを語った。

 今季の対外試合初登板となった風間は1イニングを投げて1安打1奪三振で無失点に抑えた。久々の実戦にしては上々の投球だった。3人目の打者の強烈な打球が直撃するアクシデントに見舞われたが、転がったボールをすぐさま自分で処理。「左肘の内側です。痛みは最初あったんですけど、気合い入ってたんで一目散に体が動きました」。事なきを得て、次打者をセンターフライに打ち取った。

 気迫は打球が直撃した後の行動にも滲んだ。「1回ベンチに帰って時間が経っても、どうせ痛みが来るだけ。どうしても3アウトを取りたかったんで、トレーナーにも『いいです』って言いました」。駆けつけようとするトレーナーを制止して次打者と対峙した。打球が当たった左腕は腫れていたが、風間はマウンドを降りようとしなかった。そこには風間なりの理由があった。

「自分の中では鳥肌が立つ状態は、けっこう良い状態なんです。状態的にはアドレナリンが出ているというか。イメージしていることに対して、普段から鳥肌が立つっていうのができているので」

 自身の状態を示すバロメータの1つが“鳥肌”だと語る。剛腕投手としてその名を全国に轟かせた高校時代。投げる姿をイメージをするだけで頻繁に鳥肌が立っていた。「プロに入って最初は良かったんですけど、怪我してからはもう(鳥肌が立つことが)なくなっていたんで」。入団後は度重なる怪我に苦しみ、自信を失った。それと同時に“鳥肌が立つ”という好調のサインを感じることもなくなっていた。

 今の風間は違う。「それが本当なのかはわからないですけど、自分の中ではそういう感覚があります」。感じる手応えと比例するかのように、鳥肌が立つ回数が増えてきている。自分自身が良い状態だと実感しているからこそ、生じてくるアピールしたいという思い。強烈な打球が当たっても、マウンドを降りたくなかった理由だ。

強烈な打球が当たって赤くなった腕【写真:本人提供】
強烈な打球が当たって赤くなった腕【写真:本人提供】

 好調の要因は懇願して参加した武田翔太投手との自主トレにもある。1度は参加を断られもした。「武田さんに教わった、縦のラインの意識がちょっとづずつできている。それが変化球を良くしてくれている」。学んだことが、技術的に結果として結びついてきていることを実感している。

 得たものは技術面だけではない。「自分は全力でやり過ぎてしまうことが、体がもたない理由だったんです。武田さんのメニューを聞いて、全力でやる時はやるんですけど、抜く時も大事だなっていうのはすごく学びになりました」。全力で取り組むことは大事なことではある。だが、体力が続かない状態でやり続けることが、パフォーマンスを低下させ、怪我のリスクを増加させていた。

「ケアだったり、体のコンディションを整えるという面でも、なかなか自分では思いつかないようなコンディションの整理とかを学べたのは大きいなと思います」。常に良い状態を維持するためには何をすればいいのか。キャンプ終盤で疲れが溜まる時期に、納得いく投球ができたことにも自主トレでの経験が生きている。

「今年は絶対に活躍してみせますよ!」と力強く語る。鍵を握るかもしれないのは“鳥肌を感じる回数”。「今は自分にできることをひとつずつ、自信に繋げられるように。シーズンを通して投げられるような体作りや投球をしていけたらなと思っています」。2年間の苦しみを経て迎える2024年。風間がマウンドで躍動する姿を期待したい。

(飯田航平 / Kohei Iida)