泉圭輔を独占取材…鷹ファンに“近況報告” 甲斐野の移籍を知った電話「央が人的だぞ!」

元ソフトバンクで、巨人の泉圭輔【写真:荒川祐史】
元ソフトバンクで、巨人の泉圭輔【写真:荒川祐史】

人的補償で甲斐野が西武へ、巨人移籍の泉がかけた電話…第一声は「家決まった?」

 鷹フルは元ソフトバンクで、巨人の泉圭輔投手を単独インタビューしました。人的補償で西武への移籍が決まった甲斐野央投手は2018年ドラフトの同期入団でもあり、同学年。インタビュー第2回のテーマは「人的補償をどのように知ったのか」。移籍を耳にした泉投手からの第一声は「家決まった?」。具体的な瞬間に、2人の関係性が表れていました。最後に近況報告も兼ねて、ホークスファンにメッセージをくれました。「こっそり応援してください」――。

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「家、決まった?」

 甲斐野の人的補償による西武移籍を知り、電話をかけた。泉の第一声が、これだった。2018年ドラフトの同期入団で同学年。大切な球友との思い出を振り返ると、真っ先に出てくるのはリスペクトだった。

 2018年ドラフト会議、甲斐野が1位指名を受けた。泉も6位指名でホークス入りが決まり、2人の運命は初めて交差した。初対面は同年12月の入団会見。甲斐野の明るいキャラクターと、泉の人柄の良さも相まって、関係は自然と深くなっていった。どの年でも、ドラフト1位は特別な存在。泉も「1年目からあれだけ活躍して、央に追いつけ追い越せじゃないですけど、同期のみんなはその気持ちがあったと思います」と、常にリスペクトしてきた。

 チームは今オフ、西武から国内FA権を行使した山川穂高内野手を獲得。人的補償で甲斐野が移籍することになった。発表されたのは、1月11日の夕方。泉はどのようにして一報を耳にしたのか。

 練習を終えて、スマートフォンを見た。画面には2件の不在着信。重田倫明広報と、甲斐野だった。重田広報に先に電話をかける。「重田が『おい!』って興奮した様子で。『央が人的だぞ!』って聞いて僕も『ええ!?』って。すぐに切って電話をしたらすぐに出て、って感じです」と、そこで一報を知った。すぐに甲斐野にかけ直す。「1コールか2コールくらいで出てくれました。僕もジャイアンツに決まってすぐに央には連絡しましたし、お互いに連絡の優先順位が高かったんじゃないかな」というところにも関係性が表れている。

 電話で、泉からの第一声は「家決まった?」だった。発表当日、決まっているはずもない。甲斐野も思わず「早すぎるやろ」とツッコんだそうだ。「話し出しが『移籍するの?』っていうのも、何か違うかなと思ったので『家決まった?』って。話し出しが難しかったです(笑)」と照れ笑いするのも、泉の気遣いそのものだ。

 昨年11月、泉がトレードでホークスを去ることになった。今度はお互いに関東圏内の球団となり「それは良かったね、って話はしました」とやり取りを明かす。2人ともユニホームが変わった今、振り返ってみても、追いかけてきたのは甲斐野の背中だった。

「1年目はあいつ1人が同期では頑張ってくれた。2年目と、3年目の途中くらいは実戦から離れていたんですけど、その分2年目は僕がフルで帯同して、板ちゃん(板東湧梧投手)もそこで出てきて、杉山(一樹投手)も出てきてという感じでした。18年のドラフトの人間が絶えず1軍にい続けられたのも、央から始まったことなので。それこそ1年目(2019年)の開幕戦、央が勝ち投手になったのもそうですし、僕らの代表として先頭として頑張ってくれていたなと思います」

 泉は2年目の2020年、40試合登板を果たした。甲斐野は同年2月の春季キャンプで右肘を痛めて登板なし。1年目に栄光を味わった球友がリハビリに苦しむ姿を振り返っても「1年目と2年目のギャップもあったと思います。純粋に、僕らの活躍も喜んでくれていたとは思いますけど、心からは喜んでいなかったのかなと。どこかでもどかしさも感じながらやっていたんだろうなというのは、見ていて思いました」という。ポジションも同じリリーフで、晴れ舞台も、挫折も味わった2人だから、自然と関係は深まっていった。

 2020年は新型コロナウイルスが世界を直撃した時。開幕は6月19日にまでずれ込んだ。まだ寮生だった甲斐野と泉は「その時もずっと一緒にいて、部屋でゲームをしたり、同期と過ごしている時間が長かったですね。スマブラもしたし桃鉄もしましたし」と振り返る。大乱闘スマッシュブラザーズで、泉が使うキャラクターはキャプテン・ファルコン。「ずっと寮にいたおかげで友達は周りにいましたし、暇に明け暮れるようなことはなかったです」。印象的なことだけではなく、他愛のない日々も大切な思い出だ。

 各球団が春季キャンプを過ごし、シーズンインを目指している。巨人へのトレードが発表されて、3か月以上が経った。近況報告も兼ねて、ファンへのメッセージをお願いした。泉らしい、優しい言葉ばかりだった。

「鷹フルをご覧の皆様、お久しぶりでございます。まず、今年1月1日の地震があった時もホークスのファンの方々からメッセージをもらったりしたので、とても助けられました。本当にありがとうございます。なれない環境ですけど、ジャイアンツで元気にやっています。オープン戦もPayPayドームである予定なので、なんとかそこに行けるように頑張りますので、こっそり応援してください。これからもよろしくお願いします」

(竹村岳 / Gaku Takemura)