「これ持って帰れ」 リチャードが山川穂高に授かったもの…休日に2人で行う“予習と復習”

ソフトバンクのリチャード(左)と山川穂高【写真:飯田航平】
ソフトバンクのリチャード(左)と山川穂高【写真:飯田航平】

山川穂高が西武時代から自主トレをともにする存在「結果で恩返しができれば」

 ためらうことなく、先輩の部屋の扉をノックした。ソフトバンクの宮崎春季キャンプは第3クール2日目を迎えた。全体練習終了後、居残りで打撃練習を行なっていたのがリチャード内野手と山川穂高内野手だ。練習後には山川から指導を受ける姿も見られたが、目を引いたのは通常のバットよりも長い“金色の長尺バット”で素振りをするリチャードの姿だった。

 第2クールまでは目にしなかったバットを練習に持ち込んだ意図と経緯を、リチャードはこう語る。厳しくも優しい“師匠”、山川の存在を常に近くで感じていたかったからだ。

「長いバットって手を使うと打てないじゃないですか? そういう意味合いでもらいました。ホテルでこれで素振りをしていた時に結構いい感じだったので、そこで山川さんが『これ持って帰れよ』って」。山川からもらったものだったことを明かした。

 受け取ったのは9日、第2クール終了後のオフ。第3クールに入る前の準備として、それまでの改善点と課題を見つけるため、宿舎で山川の部屋を訪ねて“予習”を行った。「そのクールのピッチャーを打った映像だとかが携帯に入ってくるので、それを見てもらった感じです」。1台のスマートフォンでリチャードの映像を見つめ、意見を擦り合わせる。その過程の中で使われたのが、金色の長尺バットだった。

「『これ持って帰って(感覚を)忘れんなよ』って言われました」

 指導の中で長尺バットを振っていると、手や腕だけではなく全身を使う感覚に手応えを感じたそうだ。3度の本塁打王に輝いた実績を持つ大先輩からのアドバイスに「僕はまだ1軍で打った人じゃない。山川さんは実績もあると思いますし、その人からのアドバイス。『もっとこうした方がいい』って、僕の考えとは全く(違う)というか……。意識も違ったので、取り入れたいという気持ちもありました」。技術的な助言はもちろん、師匠の存在を常に身近に感じられるようにすることで、背筋を伸ばして野球に向き合いたかった。

 右の長距離砲として、期待は毎年かかる。昨季は2軍で19本塁打を放つ活躍を見せるも、1軍では22試合の出場で0本塁打、1打点という成績だった。もがき苦しんでいるからこそ、西武時代から自主トレをともにした山川がホークスに加入したことは大きな影響を与える。「今日もその時(自主トレ時)も、言っていることは一貫しています。本当にわかりやすくて、実戦してみると実際にいいんです」。チームメートとなり同じチームのライバルにもなったが、近くで打撃を見てもらえる環境はプラスに働いている。

 昨年10月の「みやざきフェニックス・リーグ」では、小久保裕紀監督が山川にリチャードの打撃について質問する場面もあった。当然、指揮官の期待も高いはずだ。「あとは結果ですね。結果で身になったということを見せて、恩返しできればいいかなと思います」。指導の成果は、結果で示していくしかない。それを一番わかっているのも、リチャード本人だ。

「山川さんも練習したいっていう意思が一緒なので、次のオフも練習すると思います」。第3クール終了後の休日にも指導を仰ぐ予定だ。「僕は僕が敵なんで、僕を律して。その手助けとして山川さんがいる」。今季こそは1軍で結果を出すためにも、休日返上で先輩と同じ“練習の虫”になる。

(飯田航平 / Kohei Iida)