大関友久を突き動かすメジャーへの思い 大卒4年目の表明…背景にある千賀滉大の助言 

契約更改交渉に臨んだソフトバンク・大関友久【写真:藤浦一都】
契約更改交渉に臨んだソフトバンク・大関友久【写真:藤浦一都】

「一番になりたい気持ちが昔からあった」公の場で初めて口にしたメジャーへの思い

 もう自分の中だけで留められる思いではなかった。ソフトバンクの大関友久投手が13日、PayPayドームで契約更改交渉に臨み、1000万円アップの5500万円(金額は推定)でサインした。球団との交渉の席で訴えたのは、将来的にメジャーリーグに挑戦したい思い。「来年どうこうではない。ここ2、3年が大事になる」と静かに、熱く未来を見据えた。大関にとっては4年目を終えたタイミングでの表明。大先輩からのアドバイスが、背景にあった。

 2019年のドラフト会議で育成2位指名を受けて仙台大からプロ入り。当時の背番号は122番だったが、入団会見でも「沢村賞」と色紙に力強く目標をしたためた。2021年5月に支配下登録され、今季は自身初の開幕投手も務めた。以降は体調不良も重なり、結果的に17試合に登板して5勝7敗、防御率2.92に終わった。体調不良を踏まえて「球速が出なくなったのも全部、自分の実力」と受け止める。

 公の場では初めて口にしたメジャーリーグへの思い。「一番になりたい気持ちが昔からあった。色々、整理して考えた中で、自分は一番になりたい。大谷さんや、活躍されている方を見ても、自分もそうなりたいと思った。そういうシンプルな思いです」と、偽りのない胸中を明かす。足元をハッキリと見つめる中で自分を突き動かしたのは、今季からメジャーリーグに移籍した千賀滉大投手の言葉だった。

「正直、1年目から、もっといえば大学生の時から(メジャーリーグへの興味、憧れは)考えたりしていました。千賀さんと去年、色々とメジャーに将来行きたいという話をした時も『そういう気持ちがあるんだったら早めからいろんな人に話をしておいた方がいい』と言われていたので、今回話をしました」

 千賀は2022年オフに海外FA権を行使してメジャーリーグに移籍。1年目から12勝を挙げるなど、見事に結果で応えてみせた。ホークス時代、千賀が球団にメジャー挑戦の思いを初めて伝えたのは2017年オフ。1年でも早く海を渡りたい気持ちは失うことはなく、結果論ではあるが、実際に海を渡る5年も前から、自分の意思はハッキリと表現していた。夢を叶えてメジャーの舞台で活躍する姿に、大関も「もちろん(刺激に)なりました」と憧れを隠さない。

メッツ・千賀滉大【写真:ロイター】
メッツ・千賀滉大【写真:ロイター】

 大関自身も、投手としてNo.1になりたい思いは誰よりも強い。一方でまだ4年間で通算50試合登板、12勝13敗と自分の実績がまだまだであることも受け止めている。球団側の反応も「まだ先の話ですから。『しっかりとこちら、フロント側も前向きにというか、今後話し合っていけたらいいね』というような反応でした」と代弁する。「話をしている最中に、自分の気持ちもしっかりと伝えた方がいいと思った」と、少しでも早く公の場で、自分の意思だけは表明しておきたかった。

 今月8日に渡米し、12日に帰国したばかり。「普通に旅行です。海外に出たのも初めてだったので、1人でニューヨークに行きました」と目的を語る。今シーズン中から、オフにはアメリカに行く予定をすでに立てていたそうだ。足を運んだのはニューヨーク・ヤンキースの本拠地「ヤンキー・スタジアム」だった。シーズンオフで球場の中までは入れなかったそうだが「活躍された選手の大きな看板があったり、すごいなと思いながら周りを散歩していました」。荘厳な雰囲気と伝統を、肌身を持って感じてきた。

「将来的にアメリカに行きたい気持ちも、もともとあったので、まずはその雰囲気を感じてみたいと思いました。アメリカの中でもかなり大きい町ですし、雰囲気を感じたい気持ちと、スタジアムにも1度行ってみたかった。将来、こういうところで活躍したいなと、自分はやるしかないなと改めて気持ちは強くなりました」

 来季から背番号が42番から47番となる。42番といえば、初の黒人メジャーリーガーとしてプレーしたジャッキー・ロビンソン氏の番号で、MLB全球団で永久欠番となっている。大関にとっては育成から支配下に上がって「思い入れのある番号でした」と話す一方で「他の球団でもほとんど外国人選手がつけているので、空けた方がいいとも思った」と大関なりの気遣いでもあった。メジャーへの興味を抱いていれば、どれだけ42番が特別な番号かもわかっている。決意はもちろん、背番号変更に優しさがにじむのも大関らしい。

 来季の目標に掲げたのは規定投球回到達と、2桁勝利。「今年できなかったリーグ優勝と日本一を必ず達成できるように、チームのために投げたい気持ちです」と力強く誓った。メジャーリーグ挑戦という1つの目標だけは、明確に見据えている。自主トレは主に福岡で行う予定。自分のレベルアップとチームの優勝を目指して、充実のオフを過ごしていく。

(竹村岳 / Gaku Takemura)