石川柊太が痛感した“意識の差” 千賀滉大との再会で得た「新しい価値観」

ソフトバンク・石川柊太【写真:竹村岳】
ソフトバンク・石川柊太【写真:竹村岳】

NPB時代に自主トレをともにした千賀滉大が帰国「2、3回くらい会っています」

 大切な“ブラザー”との再会を果たして、感じた思いがあった。昨オフに海外FA権を行使して、メジャーリーグに挑戦したメッツの千賀滉大投手が、1年目のシーズンを終えて帰国している。顔を合わせているホークスの選手もいるが、石川柊太投手もその1人だ。21日には福岡県内で行われた球団納会ゴルフに参加。ロゴが「ゴーストフォーク」のキャップを着用して「これは(郵送で)送れらてきたものですけどね」と笑う。

 石川にとって2023年は苦しいシーズンだった。東浜巨投手とともに、首脳陣から柱として期待されて飛び込んだシーズン。開幕ローテーションを託されたものの、結果的には23試合に登板して4勝8敗、防御率4.15。8月18日の西武戦(PayPayドーム)では自身初のノーヒットノーランを達成したものの、好不調の波は最後まで大きかった。クライマックスシリーズでも登板はなく、3年連続で黒星が先行した。

 帰国した千賀とはすでに「2、3回くらい会っています」と明かす。千賀が海を渡った際も「いなくなることに関して『俺がいなくなるけど……』みたいな話はしなかったですよ」と笑っていただけに、今回も「2人きりで会っているわけでもないですから」と改まったような話の内容ではなかったようだ。待望だったメジャーリーグへの移籍を果たした右腕との再会で、石川はどんなことを感じたのか。

「向こうの野球にも対応をしようとしていて、そういう探究心というか。自分から見て変わっているところはなかったですね。もちろんいい意味で、ですけど」

 1年目でいきなり12勝を挙げ、新人王の最終候補にまで残っていた。1年を終えて、目にわかるほどフィジカルもスケールアップしていた。千賀との会話の内容を踏まえて、石川は「バリバリ、ウエートを入れていたというよりは(基本的に)中5日とかなので、それをシーズン中をどう回していくかを意識してやっていたんじゃないですか?」と言う。異国の地で結果を出すための千賀のプロ意識は、改めて感服させられるものばかりだった。

「日本は143試合で、向こうは160試合以上ある。過酷な移動もあったりして、そういうものに対応していかないといけない、準備しないといけない部分が、より大変だったんじゃないですか? 時差もあったりとか、そういう部分での“準備力”っていうのがより一層、向こうでは大事だったみたいです。突き詰めて質を上げて、やっていました。そういうところは取り入れるというか、感覚として大事にしないといけないところだと思いました」

ソフトバンク・石川柊太【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・石川柊太【写真:荒川祐史】

 単純にチームの試合数が多ければ、ローテーションを守っている投手なら登板数もかさむ。日本では基本的な中6日も、メジャーでは中5日や中4日が当たり前だ。過酷な移動と日程、マウンドや気候への対応を考えれば、いきなり12勝を挙げた千賀の準備がずば抜けていたことは想像できる。「日本の方が過酷ではない、とは言えないですけど」と前置きした話だったが「そういう状況の中でもしんどくなってしまうというのは、詰められているところを詰められていないから」と、今季の自分にも言い聞かせたくなるような言葉だった。

 石川が自ら切り出した例えがあった。「中6日だから投げた次の日にお酒を飲んで、体の回復が間に合わない、とか。中4日ではやらないようなことを中6日だからやるっていうのは、後手後手になるんじゃないかな。そういうところは詰められるところ」。あくまで単なる例えであり石川がそんなルーティン、というわけではないが、結果を出すために自分の全てを費やそうと思えば、やれることはまだまだある。そんなことを、海を渡った千賀から学んだ。

 石川といえば、日本シリーズでもオープン戦でも、一戦必勝の姿勢が信条。自分なりに最善の準備をしてきたつもりでも「そういう環境だと『準備にぬかりはない』って言えると思いますけど、違う環境を見たり聞いたりすると、(千賀は)その環境の中で頑張っているのが当たり前になっている。“当たり前のハードル”が、そこになっている。その当たり前が、話を聞いたりして新しい価値観になった」と唸るしかなかった。12月には32歳を迎える。これまでと同じではいけないことは、石川自身が一番わかっている。

「今までの当たり前だと、それだと(試合当日に)間に合わない。遅れを取ってしまうという感覚があったので。余計なことを考えてしまう時間がある分、考える前に体を動かす。もやもやしている時間を増やしても仕方ないので、前に前に、体を進めていく。振り返っている時間はないと思って、やっていかないといけないですね」

 来年1月は、国内で千賀と自主トレを行う予定だという。場所はまだ未定だそうだが「あいつも大人数でやるのは好きじゃないタイプですし、僕もあいつも(過去に)人数が増えた時に、自分の練習に集中できなかった」と、少数精鋭でのトレーニングになりそうだ。一番の刺激になってくれる存在が、近くにいる。小久保裕紀新監督を迎え入れる2024年、必ずチームの力となる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)