覚悟決まった柳田悠岐とのLINE 「自分もクビになる年」 谷川原健太が捕手で勝負する“意味”

ソフトバンク・谷川原健太【写真:竹村岳】
ソフトバンク・谷川原健太【写真:竹村岳】

小久保裕紀新監督から「外野手剥奪」、捕手1本で2024年は勝負することに

 危機感を抱き続けた8年目だった。ソフトバンクの秋季キャンプが17日、打ち上げ。投手は筑後、野手は宮崎で行われた秋の鍛錬が終わった。谷川原健太捕手は第4クールから筑後に移動。来季は捕手に専念するだけに、投手の球を受けながらフレーミングを実戦した。自分自身の人生をも動かす2024年。そんな中、柳田悠岐外野手からかけられた一言とは――。

 今季は61試合に出場して打率.233、0本塁打、3打点。4月30日から昇格して、終戦まで1軍に座り続けた。2023年は「スタメンであまり出られなかったので、悔しいシーズンでした。その中で、キャッチャーで初めてスタメンで出て、自信になった部分もある。プラスになった部分もありました」と振り返る。捕手としては20試合、外野手として31試合の出場だったが、谷川原自身のマスクへのこだわりも当然強い。実戦の中で勉強ができたことは、大きな収穫となった。

 秋季キャンプの第3クール3日目(12日)、小久保裕紀新監督は「外野手剥奪。拓也(甲斐拓也捕手)と勝負させる」と、来季は捕手に専念させることを明かした。俊足に強肩、高い身体能力を誇るからこそ“便利屋”で終わらせてはいけない。9年目となる2024年、いろんなものを捨てて、捕手1本で甲斐に挑む。そんな背筋が伸びるような指揮官からの言葉は、どんなシチュエーションで通告されたのか。谷川原が明かす。

「アイビースタジアムの会議室みたいなところに呼ばれて、森(浩之)コーディネーターと、高谷さん(裕亮1軍バッテリーコーチ)と、監督と、自分の4人で、座りながら言われました。(監督からは)『来年からは外野手は全くやらずに、キャッチャー1本で行こう』みたいな感じだったと思います」

 米国での指導者経験がある倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)も「空間って大事なんで。そこら辺の立ち話でするのと、ちゃんとした部屋で話をするのとでは響き方が違う」と、大切なことは雰囲気まで重要視して伝えるべきだと訴えていた。谷川原も「本当に、守備固めで(プロに)入ってきたわけでも、目指してきたわけでもない。すごく『よっしゃ!』ってなりましたし、これもチャンスだと思います」と身震いする。たった1つしかない扇の要を、全身全霊で目指していく。

ソフトバンク・小久保裕紀監督【写真:福谷佑介】
ソフトバンク・小久保裕紀監督【写真:福谷佑介】

 刺激をくれる存在が、いつも身近にいた。「同級生の川瀬と柳町が活躍をしていて、自分も活躍しないといけないし、単純に羨ましかったです。負けたくないなっていうのは自分の中でも出てきました」。80安打を放った柳町達外野手と、同期入団でもある川瀬晃内野手はキャリアハイの102試合に出場した。遠征先でもよく食事に出かける2人が、勝敗を背負って戦っている姿が羨ましかった。谷川原自身も1軍にいたからこそ感じた、新しい感情。来年こそ自分が結果で応えるつもりだ。

「仲も良い2人ですし、すごく刺激になりました。やらないといけないっていうのは出てきたので、いい関係だと思います」

 ホークスを去ることになった同級生もいる。このオフの戦力整備で、高橋純平投手が戦力外通告を受けた。“自分たちの代”のドラフト1位が、結果を残せずにチームを去る。「同期で8年間一緒にやった仲ですし、自分もショックでした。もう1回、自分も『クビになる年なんだ』って気付かされました。そこは自分も危機感を持ってやらないといけないです」と奮い立つ出来事だった。

スーツで球場を訪れる高橋純平【写真:竹村岳】
スーツで球場を訪れる高橋純平【写真:竹村岳】

 2015年のドラフト会議、支配下指名を受けた6人は全員高卒だった。高橋純とも、寮内で時間をともにすることは多かったそうで「ロッカーも45番と47番で、2つ隣だったので、一緒に話したりもしていました」と振り返る。初めて高橋純の球を受けた時も「キャンプか何かだったと思うんですけど『はっや』って思いました」と、今でも忘れられない衝撃だった。高橋純が戦力外通告を受け、PayPayドームで顔を合わせた際に「ありがとう」と感謝を伝えたという。

「もうそんな年なんだっていう、もう来年が9年目。いつクビを切られてもおかしくない年なので、危機感も出ましたし。もうやらなきゃ終わりだなっていうのは自分の中でもあるので、来年にかける思いは強いです。同級生みんなのおかげですし、みんなに感謝したいです」

ソフトバンク・柳田悠岐【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・柳田悠岐【写真:藤浦一都】

 オフの自主トレは、楽天の安田悠馬捕手と行う予定。捕手1本となっただけに「安田と2人で、キャッチャー(の練習を)します。あとはたくさん走ります」。2019年に初めて参加した“師匠”柳田悠岐外野手の元には、今オフは行かないと明かした。「途中から行こうとは思っていたんですけど、去年が人数も多かったんです。今年も途中から来る組も多くて『人数が多くなるから受けられない』というのは言われていました」と、経緯を明かした。

 16日、柳田本人とLINEでやり取りをしたという。谷川原自身の捕手での“勝負”を理解してくれたそうで「柳田さんからも言われました。キャッチャーでレギュラーを取らないといけないということで『キャッチャーでレギュラー取るんだから、これもいい機会だぞ』という話をしてもらいました」と、柳田からもらうからこそ嬉しい言葉だった。お世話になった人たちのためにも、結果を出すことで恩返しがしたい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)