【連載・板東湧梧】胸中を激白「今は苦しい」 和田毅の感情爆発に見た自分の“弱さ”

ソフトバンク・板東湧梧【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・板東湧梧【写真:荒川祐史】

楽天戦KO以降、まだ“答え”には行き着かず…「ごちゃごちゃ考えています」

 鷹フルがお届けする主力4選手による月イチ連載、板東湧梧投手の9月前編、テーマは「闘志」です。10日の楽天戦(PayPayドーム)で1回1/3を投げて4失点でKO。その日の夜の過ごし方から、どんな切り替え、振り返りをしたのかに迫りました。「今は苦しい」という現状から奮い立たされたのは、自主トレをともにする先輩、和田毅投手の姿だったそうです。

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 10日の楽天戦、立ち上がりを攻められた。初回から押し出し四球を与えるなど、2安打3四球で3点を失った。2回も四球と安打で1死一、三塁とされ、浅村に適時打を許し4点目。ここでベンチは“タオル”を投げ、2番手の武田翔太投手にスイッチした。試合後の広報を通じた降板コメントは送られて来ず。帰り際に取材に応じたが、「整理ができていない」と語っていた。少し時間が経った今、忘れられないKOをどのように振り返ったのか。

「やっぱりいろんな要素があります。一番は技術の部分で振り返ることが多かった。制球も球威も、あの時は自分の中で『別に感覚は悪くないのになんでだろう』って感じだったんですけど、振り返ってみると制球のところで、フォームにポイントがあった。マインドの部分もあるんですけど、技術とどっちが先かっていうのも難しくて。まずは技術だと思ってやっています」

 午後1時開始のデーゲーム。自宅に帰り、映像を何度も見返した。「ふと考えた時に『アアァ!』ってイライラしますけど。それくらいでした」と、長かったその日の夜の心境を振り返る。野球のモヤモヤは、野球で解決するしかない。「ダメだった時って、次投げるまでが長いですよね。1週間が長く感じました」と、18日の日本ハム戦(エスコンフィールド北海道)まで悔しさはしっかりと忘れずにいたそうだ。

 板東は定期的にメディテーション(瞑想)というセッションを受けている。楽天戦の前日にも受けたばかりで、「スッキリして臨んだ試合だったので余計に悔しかったです。マインドが悪いわけじゃないのに……」と明かす。「自分が『考えてしまうパターン』ができてしまっている。自分は、どちらかというと自信がなくて『頑張ろう』というタイプで。でもそれも、そう思っている時点で自然体じゃないですよね」と、メンタルに関しても最善の“付き合い方”を探しているところだ。

ソフトバンク・板東湧梧(奥)【写真:竹村岳】
ソフトバンク・板東湧梧(奥)【写真:竹村岳】

 東浜巨投手が体調不良で離脱したことで、登板が1日前倒し。日本ハム戦で先発し5回1失点と粘投するも、5四球を与えた。楽天戦に続いて制球が乱れた要因を「理由づけをするなら、スライダーのところで(腕の振りが)横振りになっている」と自分なりに原因を分析しているが、「まだ答えには行き着いていない」とも言う。最大の持ち味は制球力。だからこそ「そこがないと戦えないので、自分みたいな投手は。なので、今は苦しいです」と、自分の状態にもどかしさを抱えている。

「技術的なことでも、いろんなことをやっている。それが良いと思ってやっても、良くなかったり。良いんだろうけど、そこだけでもなくて……。ごちゃごちゃ考えています」

 自身のことをネガティブとも評する板東。「遺伝子検査をして、それで先天的にどうなのかっていうのを見たことがあって。2回検査して、1回は超ネガティブで出たんですけど、2回目は『メンタル強い』って出たんですよ。これって後天的なものじゃないので」と苦笑いする。「あんまり(自分がネガティブだと)思い込みすぎるのもよくないですよね」と、技術面でもメンタル面でも、成長のきっかけを探す作業の途中だ。

ソフトバンク・和田毅【写真:竹村岳】
ソフトバンク・和田毅【写真:竹村岳】

 思い悩む中で奮い立たされたのが、和田毅投手の姿だった。17日の日本ハム戦(エスコンフィールド北海道)で、和田は5回5失点で6敗目を喫した。2回に3点を失い、ベンチに戻ると2度グラブを投げつけていた。冷静なベテラン左腕が見せた熱い感情。板東にとっては先発登板の前日で、後になって映像でそのシーンを見たという。和田本人に「まだそんな、聞けていないですけど」と前置きした上で、板東なりに受け取った思いを語った。

「すごいですし、やっぱりああいうのって大事なのかなって思います。海外だったら『ああいうのがないとナメられる』とも言いますし、上の選手が見せることでチームが引き締まるというか。その人のそれまでの行いとかにもよるでしょうけど、和田さんのは響いたと思います」

 感情を見せることへの賛否に理解を示しつつも、あれだけ“振り切れる”ことを改めて「大事」だと感じた。1度の登板に対する、闘争心そのものを和田の姿から感じた。同じ試合では、周東佑京内野手もバットを振り下ろし、感情を見せていた。「見ている側からすると気持ちのいいものじゃないと思いますけど、それだけこっちも本気でやっているって思ってもらえれば」と周東が明かした選手側の思い。板東も、その言葉には同調する。

「全然、不思議なことではないと思います。僕もめちゃくちゃしたいですけど、やり切れないじゃないですけど。そこも自分の弱さと言えば弱さと思ったりもします」

 技術もメンタルも含めて、自分の“弱さ”と向き合い続けている。自分のためにもチームのためにも、今は結果を残していくしかない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)