自らを追い詰めていた“心の肉離れ” 2軍で再調整…石川柊太が明かした胸の内

ソフトバンク・石川柊太【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・石川柊太【写真:荒川祐史】

「もっと思わないといけないんじゃないのか、と思えば思うほど…」

 ソフトバンクの石川柊太投手が28日にウエスタン・リーグの中日戦で調整登板する。不振のために出場選手登録を抹消され、再調整中の右腕。28日の楽天戦で1軍復帰も計画されたものの、一度、ファームで調整登板を経ることに。復調に向けて試行錯誤を続けている最中にある。

 石川はここまで11試合に登板して3勝3敗、防御率4.53。5月10日の西武戦で7回4失点無四球10奪三振で勝利投手となったが、5月27日のロッテ戦で7四死球3失点で4回降板。6月10日の巨人戦、6月17日の阪神戦はともに3回2/3と4回持たずにKOされた。

 なにが石川を悩ませていたのか。そして、復調への鍵となるのはどんなところなのだろうか。1軍の練習に合流していた石川自身が胸の内を語った。

 首脳陣から指摘されていたのはメンタル面だ。石川自身も「そこはあります」と認める。悩ませていたのはチームを背負って戦うという自覚と責任感の強さ。「チームのためにいろいろ考えたり(周りに)アンテナを張る作業をやっていて、そんな余裕ないよね、と。(山本)由伸くんとか千賀とかみたいに結果を残すと共に余裕があった上で、周りを見るっていうのはできるけど、結果がともなってこその振る舞い。“ガワ”だけを先にやってしまっては意味がない」。

 昨季までエースだった千賀滉大投手がメジャーリーグのメッツへと移籍。首脳陣から投手陣の柱として期待されたのが石川と東浜巨投手だった。ただ、結果が出なくなるにつれ、自分を自分で追い詰めるようになっていた。「自制心が強すぎるんで、変に素直に受け取る癖がある。俺がやらなきゃいけない、でも、やれない。もっと思わないといけないんじゃないのか、と思えば思うほど腕が振れなくなる」。思いと一致しないパフォーマンス。石川は「“心の肉離れ”みたいな」と表現した。

 そうしたマインドが、登板間での調整やマウンド上での意識にも狂いを与えた。本来であれば、調整方法や技術的なメカニック面での変化や課題を探し、修正を加えていくもの。だが、いつの間にか思考の部分に原因を求めるようになった。大黒柱として相応しい投球をしないといけない、長いイニングを投げないといけない、チームに良い影響を与えないといけない……。そんな意識の中で日々、モヤモヤを抱えたまま過ごしていた。

「調整でミスしたな、もっと厳しいところに投げておけばよかった、となれば一番シンプルですけど、四球を嫌がったとか、長いイニング投げようとして一発を嫌がった、とか、そんなのを考えちゃって反省の仕方が変だった。自分の中でモヤモヤがあるっていう状況がそもそもシンプルじゃない。なんかマウンドで弱気だったな、弱気だったから(原因は)メカニックじゃないかなとか、それじゃ原因もフワッとしちゃうし、毎回後悔している感じ」

 出場選手登録を抹消になり、一時期はファームでも練習を行った。かつてバッテリーを組んだ高谷裕亮コーチをはじめ、多くの人に声をかけてもらい、ふと気付いた。「いろんな人が励ましてくれて、何かシンプルに思い出した。自分の力で立っていた、自分が立つんだと思えば立てるんだと思っていたら違った。支えられていたんだっていうのを再確認できた」。自分は周囲に支えられる存在。初心に立ち返った。

「中継ぎのつもりで1イニングずつ投げるっていう部分が自分の野球人生の中で一番大事なものだと思っているし、そこを忘れちゃいけない。長いイニングを投げていた頃、どう思って投げていたかっていうと、長いイニング投げようと思って投げていたんじゃない」

 28日に行われるウエスタン・リーグの中日戦で4、50球程度を投げる予定。その投球内容次第ではあるが、順調であれば、7月2日の西武戦(ベルーナD)で1軍に復帰するプランとなっている。トンネルを抜け出そうともがく右腕。復調の兆しを示すことはできるだろうか。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)