ポイントになった日本での経験 デスパイネ復帰の背景とオフの補強について三笠GMを直撃

ソフトバンク・デスパイネ(右)と三笠杉彦GM【写真:荒川祐史】】
ソフトバンク・デスパイネ(右)と三笠杉彦GM【写真:荒川祐史】】

「デスパイネに来てもらうというのが現時点で最適」

 ソフトバンクに復帰が決まったアルフレド・デスパイネ外野手が25日、本拠地PayPayドームで入団会見を行った。昨季で一度退団となったものの、オフに獲得したコートニー・ホーキンス外野手、ウイリアンス・アストゥディーヨ内野手がファーム暮らしに。右の長距離砲を求めるチーム事情もあって、わずか半年でホークスに復帰することになった。

 ワイシャツにネクタイ姿で会見に臨んだデスパイネは「素直にうれしく思います。チャンスを与えてくれたホークスに感謝している。グラウンドに立ってチームに貢献したい。キューバでプレーしていたんですけど、オファーが来てうれしかった」と語った。キューバリーグでプレを続けており、ホークスからのオファーを受けて復帰を即決。24日に来日し、福岡入りしていた。

 オフに一度は契約延長を行わない決断をしたソフトバンク。3年ぶりのリーグ優勝を目指すシーズンを戦う中で、デスパイネに“出戻り”を求めたのは、なぜだったのか。入団会見に同席した三笠杉彦取締役GMを直撃。その意図について話を聞いた。

「シーズンはまだあるので、他の選手にも期待はしています。もともと(オフに)外国人をどうするといったときに(デスパイネとの)再契約も検討していた。オフから選択肢に挙がっていて、キューバでプレーしていて、昨今、日本の球界のピッチャーのレベルが上がったのか、外国人選手のアジャストみたいなところが課題になっているという中で、デスパイネに来てもらうというのが現時点で最適かなと思った」

 新加入のホーキンス、アストゥディーヨがここまで戦力になりきれず、2年目のフレディ・ガルビス内野手も現在は2軍暮らし。12球団で唯一、外国人選手に本塁打がない。さらに右の長距離砲の候補として期待されていた正木智也外野手やリチャード内野手も不振に喘ぎ、2軍でプレーしている。現状、1軍のスタメンには左打者が多く並び、右打者で常時、試合に出場しているのは今宮健太内野手と甲斐拓也捕手の2人だけだ。

「理想は左打者もいて右打者もいることだけど、勝っていくための選択肢をとる中で、どうしても左打者が多くなっている。外国人選手だけではなくて、正木選手も、リチャード選手も今からまだやってくれることを期待しています。野村勇くんとかも怪我をしていて、彼にとっての開幕が遅れましたけども、一発がある選手。デスパイネ選手もそうだし、それ以外もまだまだ期待できると思っています」

 様々な選択肢がある中で、まずデスパイネの復帰をファーストチョイスとしたのは“日本の野球”の経験があるからだ。外国人選手の本塁打がないのは12球団でホークスだけだが、他球団を見渡しても、新助っ人野手で大活躍している選手は少ない。100打席以上立っている打者で最も打率が高いのは西武のマキノンの.241。本塁打はオリックスのゴンザレスの9本(打率は.232)が最多。助っ人野手が活躍するのも簡単ではなく、シーズン途中加入であればそれは尚更のため、日本の投手の特徴を知るデスパイネに白羽の矢を立てた。

 外国人の野手がなかなか活躍できない現状について、三笠GMはこう語る。

「コロナが明けて、今、スカウティング活動をやれているから、今、いい選手を取れるということではない。ここ2、3年はコロナでスカウティング活動を十二分にできなかったというようなこともある。日本の投手と3A、2Aのレベルの選手だと、日本の投手の方が平均的にレベルが高くなっている。3Aにも伸び盛りの投手はいるが、そうでない選手もいる。そういう意味で、なかなか適用が難しいのかな、と。あとはマイナーリーグの最低年俸が上がったり、アメリカでやれるものならやりたいと言う選手がたくさんいる中で、日本でやりたいと思う選手を獲得リストに挙げるとなると、なかなか各球団難しいんだろうと思う」

 WBCで侍ジャパンが世界一に輝き、新たに海を渡った千賀滉大投手もメジャーリーグで活躍している。NPBのレベル、特に投手に関しては平均的なレベルが上がり、3Aと比較しても高いと三笠GMは指摘する。また、マイナーリーグの最低年俸が昨年から2倍以上に増額され、選手たちの待遇が改善。助っ人候補になりやすいメジャーと3Aを行ったり来たりするような選手であっても、なかなか日本行きを望まなくなっている現状もあるという。

 さまざまな状況を鑑みて、デスパイネに復帰のオファーを出したホークス。チームに足りない右の長距離砲というピース。チームメートにも、ファンにも愛されてきた助っ人は、それを埋める存在となれるだろうか。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)