三盗に隠れた2つの“瞬時の判断” 三森大貴と中村晃に詰まったプロの技術と視点

オリックス戦に出場したソフトバンク・三森大貴(左)と中村晃【写真:荒川祐史】
オリックス戦に出場したソフトバンク・三森大貴(左)と中村晃【写真:荒川祐史】

ベンチのサインは「グリーンライト」…一瞬で打者と走者に共有された意識は

■ソフトバンク 3ー2 オリックス(24日・PayPayドーム)

 サヨナラ打の直前にあったのは、プロの技術が詰まった瞬時の判断だった。ソフトバンクは24日、オリックス戦(PayPayドーム)に3-2でサヨナラ勝ちした。9回1死三塁で中村晃外野手が左中間に弾き返して試合を決め、ヒーローインタビューでも「なんとか決着をつけたいと思っていました。絶対に決めてやると思って、いきました」と興奮が残る表情で劇打の瞬間を振り返った。

 2-2のまま、試合は9回へ。先頭の三森大貴内野手が遊撃への内野安打で出塁すると、甲斐拓也捕手の犠打で1死二塁となり、中村晃が打席に立った。その3球目、二走の三森がスタート。三塁に頭から滑り込み、1死三塁にチャンスを広げた。結果的に8球目を左中間に運んだが、中村晃も「三森が勇気のある盗塁をしてくれたので、僕も絶対に打ってやろうと思いました」と感謝する大きなプレーだった。

 森浩之ヘッドコーチは「グリーンライト」、すなわち“行けるなら行け”だったと明かすこのプレー。三森はスタートに至った経緯について「あの状況はバッター優先。行こう行こうとは思っていなかったです」という。1死二塁の時点では、どんな心境でマウンド上のワゲスパックを見つめていたのか。

「あんまり無理せずというか、この球で行こうっていうのもそんなになかったんですけど、球を投げるにつれて行けなくもないなと思って。でも、そんなに無理をする場面でもないので、バッター任せというか。冷静な感じで“行けるかも”くらいで行きました」

 決して積極的に盗塁を考えていたわけではなかった。迎えた3球目。咄嗟にスタートを切ったのは、まさに第2リードの“シャッフル”を取った瞬間だった。「たまたまタイミングが良かった。あそこで牽制はなかなかない場面。あの(セットポジションに)入った瞬間を見て、行けるかもって思いました」。まさに瞬時の判断。前の塁を狙う姿勢と、可能性を持ち続けた三森の準備が結果につながった。

 二塁走者による三盗。打者の中村晃にとってもスタートを切る瞬間はしっかりと視界に入っていた。「スタートしたのは見えました」。2ボールからの3球目、ヒッティングカウントでもしっかりとバットを止めた。2020年に周東佑京内野手が50盗塁でタイトルを獲得した時も、主に2番打者だった中村晃。ランナーのスタートは打席内ではどのように映っているのか。

「ランナーのスタートが良ければ、止められると思います。(今日のは)行ったので、セーフになるかアウトになるかは別として、見ようかなと思いました。真正面にいるから見えるので」

 1死二塁から三塁へ。「バッターとしてはだいぶ、チャンスが増える。本当にナイスというか、打った方よりもランナーを褒めるべき」と大きなワンプレーを語る。同じ得点圏でも二塁と三塁ではその得点確率は違う。三塁であれば、ヒットでなくても、外野フライ、そして内野ゴロでも当たりによっては得点に繋がる。

 打者にとってもプレッシャーは軽くなる。その後にフルカウントとなり「よりコンパクトに」と意識を切り替えて、中村晃は8球目の決着につなげていった。グラウンド上で2人の一瞬の判断が共有され、生まれた三盗。プロとして隙のない思考が、大きな1勝をもたらした。

(竹村岳 / Gaku Takemura)