山本由伸は「いつもより状態悪い」…3安打の中村晃が打席で感じた“ちょっとの時間”

ソフトバンク・中村晃【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・中村晃【写真:荒川祐史】

昨年は9打数1安打だった山本由伸との対戦…

 違いを感じたことは確かだった。ソフトバンクは23日、PayPayドームでのオリックス戦に7-1で勝利した。「1番・一塁」で先発した中村晃外野手が3安打1打点の活躍で勝利に貢献。相手先発は山本由伸投手で「本当に日本一の投手ですので、3本打てて嬉しいです」と、ヒーローインタビューで試合を振り返った。

 まずは初回無死、追い込まれながらも6球目のフォークを左前に運んだ。牧原大成内野手の内野ゴロで走者は入れ替わったが、その後の柳田悠岐外野手の同点適時打につながった。2回1死二、三塁からは初球のカーブを引っ張り、右前に弾む勝ち越し適時打。4回2死からは151キロの直球をしっかりととらえ、力強い打球で一、二塁間を破っていった。

 中村晃は、山本由伸のこの日の状態について「ちょっと、いつもよりは状態が悪いのかなという雰囲気を感じた」という。挙げたのは初回の対戦。初球は151キロを見逃し。2球ボールが続き、4球目の151キロも見逃して2ストライク2ボールとなった。5球目の153キロをファウルとし、6球目の144キロフォークを左前に運んだ。6球で終わった対戦の中で、中村晃が感じた違いとはどんな部分だったのか。

「スピードとかですかね。たぶん、本人もそう思っているのかなと思いますけど」

 6球で終わった対戦であり、感覚的なものを細かく言語化するのは難しいかもしれないが、もう少し具体的に聞いてみた。「うーん、どうですかね……」。少し考えた後に「いい時の山本投手を見ているので、それとはちょっと違ったのかなと思います。京セラとここでも違うと思うので、それもあったのかなと」と続けた。中村晃の目には、好調時のような立ち上がりには映らなかったことは確かだ。

 2021年から2年連続で沢村賞に輝く日本球界を代表する右腕。今季もホークスは2度の対戦で2勝を献上していた。中村晃が言う“いい時”の山本の直球は「一瞬でくる感じです」と表現する。この日、3打席目にとらえたのも直球だったが、インパクトまでに「ちょっと時間があった」と、ほんの少しの違いを逃さなかった。

 長谷川勇也打撃コーチも「晃も感じたように真っ直ぐにそこまで走りがなかったことで、いつもよりは真っ直ぐに関しての反応をそこまで求めなくてもいいというところで、カーブにも素直に打てた。今日は真っ直ぐだと思います」と話す。「前回(6月13日の阪神戦で8回無失点)が良かっただけに、そことの差が出たのかな、と。スッキリしないまま回を重ねたのかなと思います」とベンチから分析していた。

 中村晃は山本に対して、2021年は21打数3安打、2022年は9打数1安打だった。「いい(投手)ですよ。今日も状態が悪そうな割には、要所要所でいいボールが来ていた」とリスペクトする。「甘く入ってきたところにスイングを入れて打てたのがよかったのかなと思います」と3度の対戦を振り返っていた。

 打率も3割前後を維持し、1番打者としての出場が続いている。勝負強さを見せる中で、時には打席内で粘ることで打線の“アクセント”として存在感を放つ。「基本的にはヒットを打ちにいきますし、それができなかったらなんとかして粘る。次の打者にいい形で渡すっていう、それの繰り返しじゃないですか」と淡々に自分の役割を語る姿が中村晃らしい。「それがチーム全体でできていたのかなと思います」と話す表情は、もう次の一戦を見据えていた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)