東浜巨が「他の投手より抜けている部分」 斉藤和巳コーチが評価する“目に見えない力”

ヤクルト戦に先発したソフトバンク・東浜巨【写真:小林靖】
ヤクルト戦に先発したソフトバンク・東浜巨【写真:小林靖】

5回107球を要するも2失点…亜大時代から慣れ親しんだ神宮で7年ぶりの登板

■ソフトバンク 3ー2 ヤクルト(14日・神宮)

 納得の投球ではなかったかもしれないが、それも持ち味だった。14日のヤクルト戦(神宮)で先発したソフトバンクの東浜巨投手が、5回2失点で5勝目を挙げた。「ボール球が多かったんですけど、ホームランだけは気をつけながら。低めで勝負することだけを考えて。あとは、偏らないようにしました」と、なんとか作ってみせた試合を振り返る。斉藤和巳投手コーチが「他の投手よりも抜けている」と語っていた持ち味が生きた試合だった。

 初回には2死から安打と四球で一、二塁のピンチを迎えたが、サンタナに対しては内角を使いながら追い込み、最後は外角のカットボールで遊ゴロに仕留めた。2回は無死から3連打を浴びたが、1失点で踏みとどまった。5回2死三塁からサンタナの中前適時打で1点差に迫られ、続く中村にも中前打を浴びて一、二塁となったが、最後はオスナを二ゴロに斬った。5回で107球。結果的に1点差で勝ったのだから、価値のある粘りだった。

 亜大時代から慣れ親しんだ神宮のマウンドだったが、この日は投げた後につまずくような仕草を見せるシーンもあった。公式戦では2016年6月16日以来の、神宮での登板。マウンドへのアジャストに苦労したが「(マウンドは)関係ないですよ。純粋にボールを操れなかった。いいところはなかったと思います」と自分自身に原因があると強調した。

 評価が難しいかもしれないが、チームを勝たせたことは事実。150キロ前後の直球を軸にして、カットボールやツーシームを操る。投手としての総合力で勝負するのが東浜のスタイルだ。解説者時代からホークスの投手陣を見てきた斉藤和コーチは、東浜には今の先発ローテーション投手の中でも秀でた部分があると以前に話していた。

「巨に関しては他の先発投手との違いは、粘り強さを持っているから。それは他の投手よりもちょっと抜けている部分。なんとかしよう、なんとかしようっていう。ランナーを出しても、なんとかしようっていう、なんとか粘るっていうのは一番持っている先発投手かなっていうふうに見ていますけどね」

「巨がいい時は真っ直ぐがいいので。真っ直ぐに自信を持って投げられている時は、ある程度試合は作ってくれるし、本人も気持ちよく投げている感じはする。解説の時も見ていたけど、真っ直ぐがあまりよくないシーズンは数字としてもよくない。真っ直ぐで押せたり、ファウルを打たせたり、空振りを取れている時は自信を持って変化球も投げている。そうじゃない日っていうのは、かわそうかわそう、って感じはするから」

 多彩な変化球があるからこそ、まずは真っ直ぐを投げ切ることが東浜にとっても大事なこと。斉藤和コーチも「カーブも持っているけど、そんな三振を取るピッチングスタイルでもないし。だからこそ、より真っ直ぐが大事になる」と続けていた。この日、東浜は9安打を浴びながらも2失点にまとめ、「助けられた部分も多々あったんですけど、チームが負けなかったのが一番です」と野手陣への感謝は当然、忘れなかった。

 長いシーズンを戦うプロ野球。状態がいい時よりも、悪い時にどう対応していくかが重要な能力だ。亜大時代に何度も立った神宮のマウンド。「この球場で育ててもらったので、そういう意味でも特別な場所。内容はよくなかったですけど、チームが勝って何よりかなと思います」。最後はどんな時も忘れない自分のルーティン。グラウンドに向かって、帽子を取って、深々と頭を下げて、クラブハウスへ引き揚げていった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)