鳴り物入りで入団もまさかの大苦戦 43試合終え打率.234…近藤健介の不振の要因を探る

ソフトバンク・近藤健介【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・近藤健介【写真:藤浦一都】

セイバーメトリクスの指標で分析すると、昨季から大きく悪化している数値が…

 ソフトバンクの近藤健介外野手が苦しんでいる。FA権を行使して今季、鳴り物入りで入団。侍ジャパンの一員としてWBCでは世界一に貢献した好打者が、ここまで43試合で打率.234に沈んでいる。打線の軸という大きな期待を背負い、2番、3番と上位打線で起用されているが、現在の数字は物足りないと言わざるを得ないだろう。

 2011年のドラフト4位で日本ハムに入団した近藤は今季がプロ12年目。昨季まで1014試合に出場して3310打数1016安打、通算打率.307と高いアベレージを残してきた。2017年には57試合の出場ながら打率.413を記録。6年連続で出塁率は4割を超え、球界でも屈指のアベレージヒッターとして名を馳せてきた。

 そんな近藤がここまで打率.234と大苦戦を強いられている。一体、その原因はどこにあるのか。セイバーメトリクスの指標で紐解くと、近藤が苦しんでいる要因が見えてくる。

 今季の近藤の打撃指標の中には、昨季と比べ大幅に数字が悪化しているものがある。セイバーメトリクスの指標などで分析を行う株式会社DELTAのデータを参照すると、ストライクゾーン外のボール球に対してのコンタクト率を示す「O-Contact%」が大きく低下しているのだ。

 昨季の78.5%に対して、今季はここまで59.3%と20%近く減少している。最も高かった2020年で84.5%を記録し、例年80%前後の数値を叩き出してきた近藤にとって、この指標は“異常”とも言える。ゾーン内のコンタクト率は例年とさほど変わっておらず、ゾーン外のボールに手を出し、空振りしているということだ。

 そうなれば、当然、三振が増える。今季はすでに38三振を喫している。昨季99試合で記録した45三振に、早くも並ぶ勢いだ。打席に占める三振の割合を示す「K%」も昨季の11.4%から今季は19.9%に悪化している。原因となっているのが、ボール球に手を出すケースの増加。そしてそれを空振りする多さと言える。

 その一方で“運のなさ”も成績の低迷の一因になっている。セイバーメトリクスの世界には、インプレー打球のうち、ヒットになった打球の割合を示す「BABIP」という指標がある。これはどの選手も多くの機会数を経れば、リーグの平均値付近に収束していくとされる。足が速く内野安打が多い選手は上振れするが、そのBABIPは.300前後が平均値とされている。

 近藤の今季の「BABIP」は.271となっている。昨季は.327、一昨季が.341だったことを考えると、例年に比べて低い数字となっており、フェアゾーンに飛んだ打球がヒットになりにくい現状を表している。打球傾向を見ると、数年前に比べライナー性の打球が減り、フライの打球が明らかに増加している。

 昨季途中から長打を増やすように打撃スタイルを変えたという近藤。ボール球に手を出す、そして空振りする割合が増え、かつフライの打球が増えている傾向を見ると、この打撃スタイルの変化が影響を及ぼしている可能性が考えられる。12年のキャリアでも最も苦しい時期を過ごしているが、復活の時をホークスファンは待っている。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)