「投手を1人にさせない」 周東佑京が今季初の三塁…怠らなかった日々の準備と自覚

ソフトバンク・周東佑京【写真:竹村岳】
ソフトバンク・周東佑京【写真:竹村岳】

延長12回でフル出場「疲れました。めっちゃ神経を使うなって思いました」

 これまでの経験と、大きくなる自覚が、しっかりと試合に入らせてくれた。ソフトバンクは27日、ロッテ戦(PayPayドーム)に6-5でサヨナラ勝利した。周東佑京内野手が「2番・三塁」で先発。内野手としての出場は今季初だったが、無難に守備機会をこなし「疲れました。めっちゃ神経を使うなって思いました。久々だったので」と安心した表情で試合を振り返っていた。

 三塁はこれまで栗原陵矢外野手がほぼ務めてきたが、この日は「5番・指名打者」で出場した。栗原の指名打者は今季2度目で、今月2日のオリックス戦(PayPayドーム)以来。その試合での先発三塁はリチャード内野手だった。藤本博史監督は「栗原を休ませたんじゃないですよ。(栗原の右手人差し指の)爪が割れたんですよ」と説明。緊急事態の中で白羽の矢が立ったのが周東だった。

 先発の石川柊太投手が1回2死から連続四球を与える。すぐさま声をかけるためにマウンドにいったのが周東だった。3回2死一塁で安田に四球となったところでもマウンドへ。5回の泉圭輔投手、7回の津森宥紀投手と何度も投手を鼓舞していた。この日は今宮健太内野手が体調不良で「特例2023」によって登録抹消となった。内野の要を欠く中でも、浮き足立つことなくしっかりと試合に入っていた。

「(投手と)近いぶん、より声をかけないとなと思っていましたし、柊太さんも初回からそんなに良くはなかったと思うので。立ち直ってもらえるようにとは思っていました。(かける声は)『いける』とか『大丈夫だから』とか、そういう感じです。前向きになってもらえるように。展開も展開だったので」

「健太さんもいないし、マキ(牧原大成内野手)さんも久々の1軍だし、晃(川瀬)も久々のショートだしって感じだったので。そのぶん、僕も余裕があったのかなとは思いましたけど。クリ(栗原)もいつも声をかけていますし『クリがいないから』って(思われる)いうのも嫌ですし。投手を1人にさせたくないとは思っていました」

 昨季も三塁として54試合に出場した。「外野をやっている時よりは神経を使いましたけど、いつも練習していないわけでもないですし。距離も近いので、反応できるように」と培った経験は2023年にもしっかりと生きた。松山秀明内野守備走塁コーチも「1人2、3ポジションくらいは守れるようにと2月からずっとやってきている。誰がどこにいってもいけるような準備はしていた」と三塁の準備はさせてきたつもりだ。

 松山コーチはこの日の内野の布陣に「牧原大(成)も帰ってきてくれたし、バタバタすることもなかった。守備だけでいうと、そんなに不安のないメンバーだった」と信頼を寄せる。いきなり延長12回を三塁としてフル出場し、ゴロも飛球もしっかりとこなす姿には「素人ではないですし、練習もしていた。ショートを守ったこともある選手なので、安心して見ていました」と評価した。まだまだ先の長いシーズン。初めての布陣で勝てたことにも意味がある。

 2019年から1軍を経験し、年齢も重ねることで「引っ張っていけるように」とハッキリと言葉にしてきた。バットでは4打数無安打に終わったが、延長12回無死一塁ではきっちりを犠打を決めて、柳田のサヨナラ打を呼び込んだ。足だけではない。目には見えないような存在感が、今の周東にはある。

(竹村岳 / Gaku Takemura)