人生変えた和田毅からの一言…快投続ける田浦文丸の覚醒に繋がった自主トレでの“1球”

ソフトバンク・田浦文丸【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・田浦文丸【写真:荒川祐史】

首脳陣からの信頼うなぎのぼり…藤本博史監督「斉藤和巳投手コーチも絶賛している」

 見違えたような姿だが、本人にとっては「戻ってきた」感覚だ。田浦文丸投手はここまで12試合に登板して防御率0.00の投球を見せている。「並進(運動)だったり、バランスを良くしたりして。(改善したところは)結構いっぱいあります」とフォーム改善が結果につながっており、藤本博史監督が「斉藤和巳投手コーチも絶賛している」と語るように、首脳陣の信頼を積み重ねている。

 好成績の要因を「ボールのスピードと、スライダーのコントロールが少しずつ安定してきたことです」と語る。自身の最速は148キロで、今季は146キロを計測。プロ入り後は腰の痛みに苦しむなど、リハビリ組を何度も経験したことで球速が落ちていたが、昨オフの自主トレで和田毅投手に“弟子入り”したことが転機となった。

 同じく和田のもとで自主トレをした板東湧梧投手は、食事による“トレーニング”に「聞いていたけど想像以上でした」と音を上げてしまうほど。一方で田浦は「僕は大丈夫でした」と胸を張る。むしろ“大食漢”であることは自覚しており「5勤で4キロくらい太ったんです。『さすがにちょっとやばいです』と伝えて、落としてもらいました」と苦笑いで振り返る。

 和田の自主トレといえば、厳しい体幹メニューをすることでも有名だ。田浦自身も「その意味でお願いした」と、体幹を鍛えたいことが最大の目的でもあり「呼吸も変えました」という。体幹を鍛えることで、常に腹部が“締まっている”状態になる。それにより「肋骨が開かない、上がらないようになって、深呼吸をしても体幹に入ったままになる。肩甲骨や肩回り(の動き)が安定してきた」と効果を実感している。

 最終的な目的は球の質を上げ、打者を抑えること。フォームを改善する中で、和田から重要なアドバイスをもらった。自主トレ中のある日、和田にふと言われた言葉のおかげで、今の田浦がある。

「左足、折った方がいいんじゃない?」

 助言をもらい、その次に投げた1球。「ハマった感じで、すごく良くなった」と明らかに感覚が違ったという。左足に課題があることは自分でも把握していた。「僕もその感覚はあったんですけど、意識してもできなくて。和田さんと体幹をして、できるようになった感じ」。体幹を鍛えたことが新フォーム完成の手助けにもなり、あとは反復練習で自分のものにしてきた。

 一般的に足を折り投げることは、力が逃げていくとも言われる。一連のフォーム動作の中で「僕は左足が伸び切ってしまうのが早かった」と、リリースの瞬間まで下半身を含めて我慢して、パワーを解放することが球威を取り戻すきっかけとなった。「そういう意味でも大きかった」と和田との取り組みを語る。今目指すのは150キロの壁を超えることだ。大ベテランの存在が、6年目での“覚醒”につながっている。

「(和田さんは)いろいろ人のことを見てくれていますし、アドバイスも聞きやすい。聞いたらわかりやすく教えてくれますし、自分が納得するようなことを言ってくれます」

 5月4日のオリックス戦(PayPayドーム)では、先発の和田からバトンをもらって2番手で登板した。自分の人生を変えてくれた大先輩と、1軍の舞台でともに戦う。しっかりと喜びを噛み締めながら、1球1球を大切にしてマウンドに上がる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)