大関友久の9回続投の真相は? 斉藤和巳コーチが明かすベンチでの会話と“開幕投手の宿命”

ソフトバンク・大関友久【写真:福谷佑介】
ソフトバンク・大関友久【写真:福谷佑介】

「過去の自分の投球の中でも一番いいピッチングができた」

■ソフトバンク 1ー0 日本ハム(9日・熊本)

 自分で白黒はっきりさせるつもりだった。ソフトバンクは9日、熊本で行われた日本ハム戦に1-0でサヨナラ勝ちした。先発の大関友久投手が1安打完封でチームを勝たせ「過去の自分の投球の中でも一番いいピッチングができた」と胸を張る。8回に打球が右足を直撃するアクシデントがあったが、9回もマウンドに立ち続けた、その経緯に迫った。

 3回を終えて無安打と、完璧な立ち上がりを見せた。4回1死にアルカンタラに左前打を許したが、結果的にこの1安打のみ。相手先発の伊藤との一歩も引かない投げ合いを、熊本のファンに見せつけた。最大のピンチは8回だった。1死から谷内に四球を与え、伏見が犠打を決める。上川畑の痛烈な打球が右足を直撃したが、跳ねたボールを三塁を守る栗原陵矢外野手が処理。なんとかゼロを並べ、球数は「107」に到達した。

 無得点に終わった8回の攻撃中も、大関はブルペンへ。オスナと並び立ち、準備を進めた。「どんどんゾーンで勝負できて、球数を抑えながらいけた」という内容も、9回の続投につながった。打球が当たった右足も「意外と大丈夫でした」。藤本博史監督も「スパイクだったから」と、9回のマウンドを託した。

 ベンチの雰囲気を代弁したのが、斉藤和巳投手コーチだ。球数や展開など、さまざまな要素が絡む継投ではあるが、この日は満場一致で続投が決まった。勝てなかった期間も「いつも同じ感じでいてくれる」(斉藤和コーチ)とマイペースであることも大関の特徴だが、マウンドへの執着は人一倍強い。それが垣間見えたシーンだ。

「監督も『9回もいくやろ』って言ってくれたので、ありがたかったです。本人もいく気満々やったから。そういう(自分で白黒をつける)展開だったからね。この連戦の頭に1人で投げ切ってくれたことは明日以降にもつながるね」

 結果的に9回も3者凡退に抑えた。最後はアルカンタラを空振り三振に仕留め、自己最多13奪三振の力投。大関も「調子自体が良かったので、ストレートが打者の手元で強くいっていた」と胸を張った。「いく気満々」で上がったマウンドで見事に結果で応えた。本人いわく「9回表が終わったら交代ということだった」と、さすがに延長戦まで続投する予定ではなかった。野手が白星をつけてくれたことにも感謝、感謝だ。

 前回登板は2日のオリックス戦(PayPayドーム)で7回1失点。宮城との投げ合いの末、チームは0-1で敗れた。大関は118球を投げ切り「130球だって、140球だって正直投げたい」とはっきり言っていた。この試合だけではなく、見せ続けてきたマウンドへの執念がようやく報われた。

 3月31日のロッテ戦(PayPayドーム)以来の2勝目。投手の白星は打線との兼ね合いがあるものではあるが、斉藤和コーチも一緒になって前を向いてきただけに「なかなかいいピッチングをしても勝ちがつかなかった。こういう試合で最後、ゼキ(大関)にも勝ちがついて最高の形で終われた」と安心した表情だ。

 1か月以上、白星から遠ざかったことを斉藤和コーチは「宿命」だという。この日はカードのアタマでもあり、週のアタマ。相手もエース級でくるだけに「これはもう宿命よね。そういう場所を任されるような投手になってほしいっていうのと、なってきたっていうところがある」と信頼を言葉にする。この期間思い悩んだことで、最高の結果を導いてみせたのが大関の成長そのものだ。

「実績がすごくある投手じゃない。今日は勝てたけど、試練っていうのはあるし。これを乗り越えていかないと、次の段階にはいけないっていうところ。ゼキは中心になってもらいたい投手やけど、まだ正直そこまできているわけではない。これからなので。この1年、しっかりとそういうものを続けていって、また来年以降につなげていかないといけない」

 プロ3度目の完封勝利。「何より勝ったのが嬉しいですけど、その嬉しい気持ちがいつもより大きいです」。声色は変わらないが、しっかり手応えを噛み締めていた。一歩ずつではあるが、大関は確実に頼もしくなり続けている。

(竹村岳 / Gaku Takemura)

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