果たされた増田珠と栗原陵矢の“1年越し”の約束 チーム内で受け継がれる伝統

ソフトバンク・増田珠(左)と、栗原陵矢【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・増田珠(左)と、栗原陵矢【写真:藤浦一都】

プレゼントした栗原は「僕も先輩にプレゼントしてもらったんです」

 4月の下旬、インスタグラムに2枚の写真が投稿された。投稿したのはソフトバンクの増田珠内野手。先輩である栗原陵矢外野手が某海外有名ブランドのバッグを手にしている写真で「1年越しのプレゼントをいただきました!! 嬉しい~」などと綴っていた。後日、話を聞くと「栗原さんからのプレゼントです」と嬉しそうに、背負ったそのバッグを見せてくれた。

 先輩が果たしてくれた“約束”だった。昨年7月17日のロッテ戦(ZOZOマリン)。この年、初めて1軍に昇格した増田は即スタメン起用され、第2打席には記念すべきプロ初本塁打を放った。これ以前から、栗原からプロ初本塁打を打ったら「好きなものをプレゼントしてあげる」と約束してもらっていた。2017年のドラフト3位で入団し、5年目で飛び出した嬉しい一発だった。

 だが、この時、栗原は左膝前十字靭帯断裂の大怪我を負い、懸命にリハビリを続けていた。オフの間も増田は松田宣浩内野手(巨人)のもとで、栗原は単身米国へ渡り、それぞれ自主トレに励んでおり、なかなか予定が合わず、約束は延び延びになっていた。そうこうしている内に2023年のシーズンが開幕。増田は当初2軍におり、1軍の栗原と時間を共にするタイミングはなかなかなかった。

 増田は4月19日の西武戦で待望の1軍昇格を果たすと、即「8番・右翼」でスタメン起用された。第2打席で左中間への適時二塁打を放つと、9回の第4打席では今季初本塁打のソロ。「『(プロ)2号も出たし、じゃあ行くか』みたいな感じで」。2人で予定を合わせて、佐藤直樹外野手も一緒に連れ立って街へ出かけた。

「最初は冬に向かっていく時期だったので『ダウンコートが欲しいです』っていう話から始まったんですけど、どんどん変わっていって、結局はバッグに。値段が上がっちゃいました」と増田は明かす。それでも、栗原は気前よくプレゼントしてくれたという。

 プレゼントした栗原はこう語る。「僕も先輩にプレゼントしてもらったんです。初ヒットの時は(東浜)巨さん、初ホームランの時はギータ(柳田)さんに。先輩にしてもらったので、僕も後輩にはやってあげたいなって思っていたんです」。栗原自身も経験した先輩たちからの“粋な計らい”。ホークスのチーム内で継承されている“伝統”だった。

 栗原からバッグを贈られた増田も「自分も後輩にやってあげたいなと思いました。そのためには自分もしっかり稼いで、そういう先輩になりたいですね」と言う。後輩にプレゼントしてあげるためには、まず自分がチームの中心となり、しっかりと稼がなければいけない。そんな思いも選手にとって1つのモチベーションになっている。

(鷹フル編集部)