柳町達が正木智也にLINEを送った心中…自らも経験したから分かる打席に立つ“恐怖”

ソフトバンク・正木智也(左)と柳町達【写真:竹村岳】
ソフトバンク・正木智也(左)と柳町達【写真:竹村岳】

20日には26歳の誕生日を迎えて「健康な1年にしたいです」

 ここだけは個人的な関係として、後輩に寄り添いたい。ソフトバンクの正木智也外野手は21日、2軍本隊に合流した。ウエスタン・リーグの広島戦(由宇)に出場して5打数1安打。1軍も含めた今季の公式戦で待望の“初安打”を放ち、表情を緩めた。もう一度地に足をつけ、1軍を目指していくことになった。

 正木は開幕スタメンを射止め、藤本博史監督から「50打席与える」と言われながらも、実に18打数無安打。再調整を余儀なくされ、2軍に合流した。そんな正木を「だいぶ心配していました」と言うのが、慶大の2学年先輩でもある柳町達外野手だ。柳町自身も開幕1軍をつかんだが、わずか1日で登録抹消。もちろん自分のことに集中する一方で、正木の結果にも気はかけていた。

 正木が入団した時には、若鷹寮で使ってもらうために自身が使用していた冷蔵庫をプレゼントしたほどの仲。正木も柳町のことを「達さん」と呼び「達さんと接する時が一番素(す)かもしれないです」と言うほど慕っている。柳町が言った「心配」というところから、もう少し踏み込んで、正木の姿をどう見ていたのかを聞いた。

「心配でした。なかなか1本出ていなかったので。LINEも1回しました。誰しもが通る道だとは思いますけどね。『とりあえず楽しめ』って言った気がします」

 プロ野球選手にとって、喉から手が出るほど「H」のランプを灯したい中で、結果で応えられないことも時にはあるだろう。柳町も「めちゃくちゃわかります」と正木の気持ちに共感する。「出したい、出したいって気持ちが強くなるほど思い通りにいかないですし、もどかしさはすごくわかります」と具体的に続けた。自身は2軍にいたものの、苦しむ後輩に真っ直ぐに手を差し伸べていた。

 柳町は2022年に107試合に出場して89安打を放った。5月には19打数連続無安打を経験しただけに「そう考えると、あの時期は苦しいじゃないですけど、打席に立つのも『うぅ……』って感じでした。だからすごく気持ちはわかります」と言う。状態が良くないことを自分でもわかっていても、首脳陣は期待して使ってくれる。不甲斐なさと、1本出したい気持ちの狭間にいると、打席に立つことにすら勇気が必要だった。

 その苦境を、どう打破したのか。「色々考えましたけど、とりあえず1球1球に集中しようと思っていたのが良かったんだと思います」と明かす。苦しい時期を乗り越えた経験は、確実に自分の糧となっている。技術的なアプローチも当然必要だが、柳町自身も答えを探し続けている。

「何なんですかね……。こればっかりは、人がするスポーツですから。回数を重ねれば(いつかヒットは)出るやろ、じゃ難しいですよね。考えれば考えるほど難しいですけど、試合に入るまでは考えて、試合に入ったら集中。それが一番じゃないかなと思います」

 20日には26歳を迎え「健康な1年にしたいです」とうなずく。正木と入れ替わるようにして、柳町は23日のロッテ戦からの1軍に昇格する。昨季の活躍を経た柳町は、技術面だけじゃなく、先輩としても何倍も頼もしくなっている。

(竹村岳 / Gaku Takemura)