「打球の行方は神様が決める」 上林誠知を“スッキリ”させる長谷川勇也コーチの言葉

ソフトバンク・上林誠知【写真:竹村岳】
ソフトバンク・上林誠知【写真:竹村岳】

DeNAとのオープン戦で逆転勝利…上林が8回に決勝の2点右前打

 ソフトバンクは19日、 本拠地PayPayドームで行われたDeNAとのオープン戦に4-2で逆転勝ちした。「6番・中堅」で出場した上林誠知外野手が8回2死満塁で右前へ決勝の2点適時打。「オープン戦でしたけど、ミーティングでもカツが入りましたし、何とか打ちたい気持ちは強かった。ああいう場面で打てたので、本番の良い場面でも打てたらと思います」と振り返った。

 チームは2点を追う8回、三森大貴内野手の適時二塁打と柳田悠岐外野手の犠飛で同点に追いついた。上林にとっては3打数無安打で回ってきた2死満塁のチャンス。ファウル、空振りと2球で追い込まれたが、最後は浮いてきた三浦のチェンジアップを右前に運んだ。藤本監督から試合前に「もっとがっついてもらいたい」と得点圏での打撃を課題を挙げられていたが、結果で示してみせた。

 打席前の言葉にも背中を押された。長谷川勇也打撃コーチに耳打ちをされるシーンがあり「しっかり投手に入っていって。『打球の行方は神様が決めることだから』だと言われました」と内容を明かす。生真面目で実直な性格ではある一方で、時には考えすぎてもしまう上林。だからこそ、長谷川コーチの存在が迷いなく打席に立たせてくれる。

「長谷川さんの存在は自分にとって大きくて、いつも疑問に思ったことを聞いたら全部に答えてくれますし。すっきりして終われるというか、そういう存在なので。本当に助けてもらっています」

 試合前の打撃回り、ティー打撃はいつも長谷川コーチにトスを上げてもらっている。「思ったことがあればティーの前に聞く。頭がスッキリするような答えをいつもくれるので、さすが首位打者ですね」と感謝しきりだ。長谷川コーチの現役時代は「独特の雰囲気、近づけないような雰囲気があった。今の方が話はしています」と距離感を保っていたが、指導者と選手という関係になってから、よりグッと近づいた。

 長谷川コーチも、上林の能力は高く評価している。だからこそ「彼もまだまだ、強さを持ってほしい。能力があるだけにもっと自信を持ってやってほしい」と期待を寄せる。時には考えすぎる上林の性格も理解して「1打席の中で、あれもこれもできないので。ボールは丸と丸の世界だから、どっかに飛ぶくらいの感じで。練習は神経質に、試合は思い切ってやってもらいたい」と話していた。

 課題に挙げられたチャンスでの打席こそ「スッキリ」が重要となる。ゴロを打たせる、三振を狙うなどバッテリーの狙いも顕著に出やすい場面だ。上林も「チャンスの時はバッテリーも警戒して変化球で入ってきたりするので、低めを振らないとか、考えてしまっている時は手も出しにくい。考えすぎは良くないし、頭をスッキリさせておくことが一番重要です」という。まさに長谷川コーチの助言が打たせてくれたような一撃だった。

 藤本博史監督が頭を悩ませるのは、好調の上林をどう起用していくか。オープン戦打率は.333で、1番での起用が目立つが「その辺が難しいところ。WBC組も帰ってくるので、まだ1番が誰になるのかは決まっていない」と現状の構想を明かした。上林自身も打順には「1番っていうのは特別で、あまり打点を稼げない打順。他は一緒だと思います。自分では決められないので」と強調していた。

 開幕に向けての競争はまだまだ続く。心境を聞かれると「聞きたいですか?」と少し笑って報道陣を見た。「何回もしゃべってきましたけど……。色々、DHを誰にするとか、首脳陣の中でも頭にあると思いますけど、自分じゃ決められないので。今までのコメントを使ってください。同じことを思っているので」と淡々と話した。迷いのなくなった上林なら、投手との勝負にも勝っていける。

(竹村岳 / Gaku Takemura)