育成から侍ジャパンの切り札へ 世界を驚かす“神足”…周東佑京の原点と進化

独占インタビューに応じた侍ジャパン・周東佑京【写真:福谷佑介】
独占インタビューに応じた侍ジャパン・周東佑京【写真:福谷佑介】

周東が明かすスライディングの極意「タッチを吹っ飛ばしにいく」

 第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で野球日本代表「侍ジャパン」は3大会ぶりの世界一を目指し、21日に米フロリダ州マイアミでメキシコと準決勝を戦う。泣いても笑ってもあと2試合。1点を争う息詰まる熱戦が予想される試合で“切り札”として期待されるのが“足のスペシャリスト”周東佑京内野手だ。その韋駄天ぶりは「神足」とも称され、勝負どころでの代走起用など、チームの命運が託される場面が必ずあるはずだ。

 もともとは育成選手としてプロの世界に飛び込んだ周東。大学時代は有名だったわけではなく、国際舞台とは無縁の選手だった。WBCに出場するまでに成長できたのは「長所を磨き続けたところが1番良かったと思います」と語る。「足が速いけど打てないからってバッティングを伸ばそうかを考えるよりも、まずは走塁面をどう伸ばすかっていうのを思っていました」。自分がプロでメシを食っていくにはどうしたらいいか。それを突き詰めた末に、誰にも負けない武器を身につけることに心血を注いだ。

「リードの大きさもそう、スタートもそう、スライディングもそうですね。その3つにはこだわってやってきました」という周東。中でも、ヒリヒリとした場面で決める盗塁で威力を発揮するのがスライディングだ。もっとも大切なのは「スライディングでスピードが落ちないようにすること」だという。頭の中で思い描くのは「タッチに負けないように、タッチを吹っ飛ばしにいくイメージですね」と説明する。

 スピードに乗ったまま、むしろ加速するようなスライディングは周東の持ち味でもある。「『速く滑る』というより『強く滑る』感じです」。相手ごと吹っ飛ばしにいくような“強いスライディング”を可能にするのは、磨き上げられた技術にある。「地面に着く体の面積が多いとスピードは落ちる。お尻は地面に着かず、スネで滑ります」。グラウンドに接地するのはスネだけ。時にスネが血だらけになることもある。

 当然、道具にもこだわりが詰まっている。特にその脚力を支えるのがスパイク。足を武器にする周東にとってスパイクは「一番考えたい、一番こだわらなきゃいけないところ」だという。「やっぱり軽さが一番ですね。軽ければ軽いほどいいですけど、軽くし過ぎたらすぐに壊れてしまう。すぐ壊れても困るので、壊れない範囲で軽ければいいですね」。選ぶ上で最も重視してきたのは「軽さ」だという。

プロ入り後も悩んでいた“問題”、出会った今のスパイクがフィット