打者を戸惑わせる“ズレ”…150キロに満たない和田の球はなぜバットを折れるのか

ソフトバンク・和田毅【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・和田毅【写真:藤浦一都】

和田毅投手が8日のヤクルトとのオープン戦で今季初の実戦登板

 ソフトバンクの和田毅投手が8日、ヤクルトとのオープン戦(PayPayドーム)で今季初めて対外試合に登板し、2回を無失点に抑えた。春季キャンプ中に左太もも裏の張りで調整が遅れていたが、安定感抜群の内容で今季初実戦を投げ終えた。

 4回からマウンドへと上がった42歳の左腕はまず、松本直のバットを143キロでへし折って左飛。バットの先でとらえた打球で、甲高い音がドーム内に響いた。2死としたあと、宮本はチェンジアップでまたバットを折って三ゴロ。5回は2死からサンタナに左前打を許したが、最後は長岡をカーブで右飛に仕留めた。充実の23球に「左右の両サイドもある程度コントロールできたので、悪くはなかった」と振り返った。

 この日の最速は144キロだった。23球で2本のバットを折った。和田自身は「(バットが)乾燥していたんじゃないですか。申し訳ないですね(笑)」と冗談めかして笑う。バットを折るということは勝敗にも成績にも直結しないが、バッターを確実に打ち取っている証。150キロに満たないボールでもどうしてバットをへし折ることができるのか。この日、バッテリーを組んだ渡邉陸捕手が証言した。

「完全にバッターのタイミングをずらしているというところだと思います。タイミングがずれているのはバッテリーの狙い通りの進め方ができている時ですし、あと和田さんは真っ直ぐもスライダーもチェンジアップも、投げ出した時の軌道が同じというか。最初の軌道からずれて、それで折れるんじゃないですか。(8日のヤクルト戦も)プランが見えるじゃないですけど、イメージ通りにいけました」

 和田の特徴として、どんな変化球でも、安定したリリースポイントからすっと曲がる。それによって打者はタイミングを狂わされる、と渡邉陸なりの視点で語った。さらに「タイミングがずれればバットが折れる確率は高くなります」と分析する。差し込んだり、泳がせたりすれば、バットは折れる。タイミングの外し方が和田は秀でていると、バッテリーを組んだことで改めて実感した。

 育成時代には打者として和田の球と対峙したこともあるといい「僕も詰まって折られました。インコースの真っ直ぐか、シュートだったと思うんですけど」と自身の経験も振り返る。8日の配球面に関しては和田から一任され「前に組んだ時と、去年の和田さんのイメージを持って。何回か首を振られましたけど、そんな考えもあるんだということもありました」と、受ける捕手をも成長させるような内容だった。

「もっと組んでみたいです」と語る渡邉陸の表情は、和田とのバッテリーに手応えも楽しさも感じていた。和田毅という選手の存在は、数字以上のものをホークスにもたらしている。

(竹村岳 / Gaku Takemura)