東都で1安打…育成9位の亜大・重松は「ウチだから伸ばせる」 スカウトが絶賛する潜在能力

ソフトバンクから育成9位指名を受けた亜大・重松凱人【写真:学校提供】
ソフトバンクから育成9位指名を受けた亜大・重松凱人【写真:学校提供】

中学時に110mハードルで全国3位…スピードは「周東らと張り合える」

 これぞ“ロマン枠”だ。ソフトバンクは28日、福山龍太郎アマスカウトチーフと宮田善久アマスカウトが東京都武蔵野市の亜大を訪れ、育成ドラフト9位の重松凱人外野手に指名挨拶を行った。重松は亜大で専ら控えにとどまり、リーグ戦では4年間通算わずか7試合出場、12打数1安打。それでもソフトバンクは、類まれな潜在能力を買い指名に踏み切った。福山チーフは「われわれだからこそ彼を伸ばせる可能性がある」と胸を張る。

 東都リーグで放ったヒットは、4年間を通じて今春の1本のみ。1年生の春、コロナ禍でリーグ戦が中止となった2年生の春、2年生の秋と3年生の春・秋は1度も出場がなかった。直近の今秋も4試合出場、5打数ノーヒット。特に故障があったわけではなく、重松は「シンプルに実力がなかった」と言う。

 しかし、福山チーフは「われわれが計測したデータでは、大学球界トップランクの数字を出している。スイングスピード、打球速度などが抜群で飛ばす力があり、足も速い。西武さんがドラフト1位指名した早大の蛭間(拓哉外野手)君の数字も素晴らしいが、重松君も遜色ない」と激賞する。

 187センチ、90キロの恵まれた体格で、福岡・戸畑高時代には通算28本塁打を放った右投げ右打ちのスラッガー。それでいて、50メートル5秒9の俊足を誇る。毎年のようにプロへ選手を輩出し、今年も3人が支配下でドラフト指名された亜大では出場機会に恵まれなかったが、高校時代に目を付けたソフトバンクは、大学の練習でも姿を追いかけてきた。福山チーフは「重松君に一番必要なのは、試合経験です。いかに打席数を増やし、生きた球を見せ、バットを振らせるか。われわれは出場機会をつくることに長けている。彼に出場機会を与えた時、どんな変化が起こるか」と胸を躍らせる。

 ソフトバンクは育成を含めて莫大な選手を保有し、今季までの3軍に加え、来季からはNPB初の4軍を創設する。独立リーグの球団や社会人チームを相手に3軍で120試合、4軍で80試合程度を見込んでいるという。重松にとっては、社会人や独立リーグに進むよりも多くの出場機会が保証されると言える。

 中学時代はシニアリーグでプレーするかたわら、学校の陸上部に所属し、2年時の110メートルハードルの記録が全国3位にランクされたほどで、身体能力は底知れない。「柳田(悠岐外野手)選手のように、走攻守でチームに貢献できる選手になりたいです」と目を輝かせる重松に、福山チーフは「柳田は足を怪我するまでウチで一番足が速かった。今は周東(佑京内野手)や佐藤(直樹外野手)がトップランクですが、たぶん重松君は張り合える。魅力満載の原石ですよ」とうなずいた。

「環境は整っていると聞いているので、あとは自分次第。絶対に結果を出してやるという気持ちで戦っていきます」と重松は言い切った。4軍制に踏み出すソフトバンクが、科学的なデータを基に見出した異色の人材。その成長の行方は、日本球界のスカウティングそのものにも一石を投じるかもしれない。

(鷹フル編集部)