広島戦力外から人生逆転 藤井皓哉が見せる“MVP級”の働き、魔球フォークの進化

ソフトバンク・藤井皓哉【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・藤井皓哉【写真:藤浦一都】

シーズン中にカウントを整えるフォーク、空振りを奪うフォークを投げ分けるように

■ソフトバンク 4ー2 楽天(6日・PayPayドーム)

 圧巻のピッチングだった。6日に本拠地PayPayドームで行われた楽天戦。2点リードの8回にマウンドに上がったソフトバンクの藤井皓哉投手が完璧に楽天打線をねじ伏せた。3者連続空振り三振に「最近塁上を賑わせてしまっていて、3人で終われたのが久々なので、本当に良かったなって思います」と安堵していた。

 すっかり8回のセットアッパーが“定位置”となった藤井。この日も2点をリードした8回に出番はやってきた。先頭の西川を2球で追い込むと、宝刀フォークで3球で空振り三振。続く山崎も2球で追い込み、4球目のフォークでバットに空を斬らせた。鈴木大も2球で追い込み、5球目のフォークで空振り三振。わずか12球で3者凡退に仕留めた。

 この日は3人の打者全員を2球で追い込み、投手有利のカウントを作った。「早く追い込めば三振が取れる。三振にこだわるというより、早めに追い込めた結果かなと思います」。ここ3試合は2四死球ずつを与えて走者を背負う苦しい投球が続き、球数もかさんだ。「ランナーを出すと球数も使いますし、いろんなところに神経使うので、いつもより疲れるので」。この日の投球が理想の形だった。

 昨季は独立リーグ・四国ILの高知でプレーし、今季ソフトバンクに加入した。当初は育成選手での加入だったが、開幕前に支配下登録されると、今やチームに不可欠な存在に定着した。21試合連続無失点と安定した投球を見せ、シーズン半ばには勝利の方程式に組み込まれた。ここまで44試合に登板し、4勝0敗17ホールド2セーブ。防御率はついに0.99と、0点台に突入し、チームのMVP候補と言っても過言ではないほどの働きを見せている。

 この活躍を支えているのが、鋭い変化を見せるフォークボールだ。カーブのようにやや一塁側方向に曲がりながら落ちる独特の変化をする。もともと、藤井の武器だったが、シーズンに入ってからも試行錯誤を繰り返し、より一層の進化を遂げているという。

「キャンプでは引っかけるようなイメージがあって、ただそれが強すぎるようになったりした。その中でシーズン、オープン戦とかで自分で試行錯誤しながら、どうしたらいいかっていうのをやってきました。その中で、シーズン入っても最初は空振りを取るフォークだけだったんですけど、今はカウント球を投げれるように。いろいろ今も試行錯誤しながらやってます」

 元来は空振りを奪うためのフォークしか投げていなかったものの、今ではカウントを整えるフォークと空振りを奪うフォークの2種類を投げ分けるようになっている。「カウントが不利になった状況でもフォークでカウントが取れてるのでゼロで終われてるかなと思う」。結果を出し続けられる要因の1つがここにある。

 熾烈な優勝争いが続く9月の戦い。藤井にとっては未知なる領域になる。一度は広島を戦力外になり、高知を経て辿り着いた再出発の地。「野球ができてるっていうすごい充実感がありますし、正直、優勝争いとかそういうのはあまり気にしていないです。自分ができること、もうマウンドに上がって常にゼロで終わることができれば、自分の仕事等はできてるのかなと最低限できてると思うので、そこは変わらずやっていきたいと思います」。どん底を味わった藤井。優勝争いのプレッシャーは気にせず、淡々と目の前の打者を打ち取っていく。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)