「投げ始めたのは先週ぐらい」 武田翔太、11年連続勝利を呼んだ練習1週間の新球

ソフトバンク・武田翔太【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・武田翔太【写真:藤浦一都】

今季初先発で初勝利を挙げた武田はチェンジアップが効果を発揮

■ソフトバンク 9ー1 楽天(6日・PayPayドーム)

 ソフトバンクは6日、本拠地PayPayドームでの楽天戦に9-1で大勝した。川瀬の先制適時打と勝ち越し犠飛でリードを奪うと、打線が15安打9得点と爆発。投げては今季初先発となった武田が7回途中1失点の好投で今季初白星をあげ、プロ入りから11年連続勝利を達成した。

 大関の手術によって、急遽巡ってきた代役での先発登板。チームの緊急事態で武田が救世主となった。3回まで無安打投球。4回に不運な内野安打から同点に追いつかれたものの、その後も楽天打線を翻弄し、6回まで3安打に抑え込んだ。7回先頭の岡島に四球を与えたところで右手の指がつったため緊急降板となったものの、チームに勝利をもたらす好投だった。

 この試合で楽天打線を翻弄したのは“ぶっつけ本番”で投じたというチェンジアップだった。武田の武器といえば、150キロを超える真っ直ぐと代名詞のカーブ、そしてカットボールとフォーク。チェンジアップは持ち球にはなかったはずだが、この日はこの新球種がとてつもなく威力を発揮した。

 武田は試合後、信じられないような事実を明かした。「今日からチェンジアップを新球で投げていたんで。(練習し始めたのは)先週ぐらいから、ですね。真っすぐとカーブに張られるんで、間の球が欲しいなと」。練習期間わずか1週間。先輩でもある和田毅投手に握りや感覚を聞き、和田からかつてダイエー、巨人で活躍した杉内俊哉・現巨人コーチの握りも教わった。

「もしかしたら2人の握りと感覚を足したらいいんじゃないかなと思った」。キャッチボールやブルペンで試しに投げてみると感覚がよかった。「やっと見つけたなという感じ」。練習してわずか1週間ほどだったが、「投げないと始まらない」と今季初先発で投入することを決断。思った以上に相手打線に効き目があった。

 元々、器用なタイプで、キャッチボールで遊びで試した球種がそのまま投げられるようなったりもしてきた。ただ、これまで投げたいと思っていたチェンジアップはなかなかしっくり来る感覚がなかった。再び先発で投げるチャンスを前に習得に再挑戦。わずか1週間ほどで自分のものにし、武器にしてしまうのだから、やはりその器用さは恐るべきものだ。

 今季はキャンプ中に広背筋の炎症で戦線を離脱。実戦に復帰した直後、今度は新型コロナウイルスに感染し、4日間ほど高熱で寝込んだ。なかなか万全の状態に戻らずに出遅れた。「毎年厳しいんですけど、今年は野球以外のところで一番厳しい年でした」。1軍昇格も、怪我人とコロナ陽性者の続出により、チームが緊急事態に陥り、中継ぎとしてだった。

「先発で投げたいなっていうのはやっぱりありました。ただ、そういう状況じゃなかったので、どこでもチームの力になれればいいかなとは思っていました。投げるチャンスが来たので、絶対にモノにしたいとは思っていました」。千賀がコロナ陽性、大関が手術で離脱。先発投手陣も危機的状況に陥る中で、頼もしい右腕が先発ローテに加わってきた。

(鷹フル編集部)