アルメンタをリリーフで「使わないでくれ」
チーム事情に左右されることなく、ホークスが強くあり続けるための未来を見据えている。育成のトッププロスペクト左腕、アレクサンダー・アルメンタ投手の起用法は球団主導で先発に限定されている。その舞台裏について、城島健司CBOを直撃した。本気で見据える“10年後”。「ちょっと違うんじゃないか」と語った、その真意とは――。
メキシコ出身で、今年6月には22歳を迎えるアルメンタ。2022年からホークスの一員となり、着々と力をつけてきた。昨シーズンはウエスタン・リーグで13試合に登板して3勝3敗、防御率3.47。150キロを超える直球を武器に、46回2/3を投げて54三振を奪うなど、高いポテンシャルを遺憾なく発揮している。開幕を迎えた時点で支配下選手は64人。育成選手が残り「6枠」を争う中で、球団が期待する“超有望株”であることは間違いない。
小久保裕紀監督が、類まれなき能力を秘める左腕に言及したのは3月22日だった。「アルメンタは基本的には先発です。球団から中(継ぎ)では使わないでくれと。先発でしっかり育てるということです。(城島)CBOからも連絡がきているので」。唸りをあげる豪速球を見れば、1軍の勝ちパターンに組み込みたいと思うのは当然のこと。現場とフロントの間で、どんな議論が交わされたのか。城島CBOが明かしたのは長期的な目、そして“別プラン”が存在したという事実だった。
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続きの内容は
アルメンタ「先発限定」の真意。目先の1勝より優先した“未来の柱”
現場とフロントが議論したA案B案。「調整役」としてのCBOの矜持
目の前の一戦に「没頭する監督」と「10年後を描くフロント」の理想的な分業
「夏以降に先発する機会があるなら調整させた方がいい」
「チームのプランとして短期的に見るのか、長期的に見るのかは大きな議論になりますよね。1軍が“きょう勝つ”ための策を僕たちが奪っているわけではない。でも彼に関しては夏以降や来年に先発する機会があるなら、そこに向かって調整させた方がいい。その問題だと思います。彼の力があれば、短期的に中(リリーフ)に入って投げることはもちろんチームのプラスになる。1軍の監督なら『戦力を与えてほしい』というのは当然理解しています。だけど正直、それだけではパンクしてしまうので」
現時点でも、アルメンタは1軍のリリーフに食い込むだけの力を持っていることは事実だ。だが球団が期待しているのは、確固たる「太い柱」になってもらうことだ。仮に来シーズン以降、長いイニングを消化してくれれば、投手陣全体の“パンク”も防ぐことができる。「来月には変わったことを言うかもしれませんが、今の段階ではそうやってスタートしました。僕と監督は常に会話をして、その一瞬一瞬に対応しているので」。流動的な面も認めつつ、城島CBOが口にしたのはアルメンタへの高い期待だ。
「あれだけの能力があれば、単純に『中継ぎでいい』に決まっているわけですよ。じゃあ今、中継ぎがいないからスポット的にそういう起用をさせることが、我々の教育、育成プランに合っているのか。『それはちょっと違うんじゃないか』という案を、僕たちは出したということです」
現場サイドと意見を交換する前に、まずは球団内で考えをまとめ上げる。アルメンタの“先発限定”に至った経緯について、城島CBOははっきりと口にした。「A案とB案があって、B案を取ったということです」。詳細を語ることはなかったが、明かしたのは“別プラン”の存在だ。議論はとことん深く、方向性はシンプルに――。「その方がスマートだし、正しい意見が出るのかもしれないですね」。選手を迷わせないことも、フロントにとっては大きな仕事だ。
コーディネーター制も使いながら…球団が起用法まで決定
近年、ホークスは「コーディネーター」と呼ばれる役職を新設した。選手に対しての指導を一貫するだけでなく、現場における起用法を球団主導で決めることも珍しくない。「それが当たり前になってきていますので。1軍だろうが4軍だろうが、そこに異論を唱える首脳陣、監督、フロントの人はもういないです」と城島CBOも明かす。アルメンタに限らず、全ての若手に対してアプローチを統一しているのもホークスの特徴だ。
孫正義オーナーが掲げるのは「めざせ世界一!」。目先の1勝はもちろん大切だが、ホークスは“常勝”を義務付けられている。5年後、10年後を見据えなければならないと城島CBOは言う。「だってオーナーから『ずっと勝て』って言われるんだもん。今年も勝ちながら来年の戦力を整えなきゃいけないんだから。だったらね、長期的に見ないと」。そうおどけて笑ってみせたが、今シーズンも、「2036年」も本気で頂点を狙いにいく。
「今の小久保監督にそんな“先”まで考えられない、とは言わないですけど。現場の仕事はきょうの試合に没頭することじゃないですか。フロントとは仕事が違いますよね。もちろん監督も長期的な目を持ってくれているとは思いますけど、5年、10年後の未来となると僕らの方がハッキリ見えていると思うので」
チームの隅々にまでいき渡った常勝のイズム。選手の将来像を守りながら、確固たる“強さ”を全員で求めていく。
(竹村岳 / Gaku Takemura)