「やっぱり角度がつくようになりましたよね。打球速度はもともと速い打球が出るときは出ていたんですけど、角度の方が顕著かな、という気がします」
こう語るのは、ベースボールサイエンス部門のアナリストだ。200センチの巨躯から生まれる打球速度は元来、十分なものがあった。課題は打球角度。これまでは長打になりにくいライナー性や低い弾道の打球が多く、どちらかと言えば中距離打者のスタイルだった。
しかし、今年のキャンプではバックスクリーンを直撃する打球を放つまでに変貌。同アナリストも「ああいう打球ってなかなかなかったですね。センターに飛ぶのは、詰まったような打球が多かった」と証言する。
もう1人、今年の秋広を「去年と全然違う」と評した人物がいる。昨季もファームで打撃を見ていた明石健志R&Dグループスキルコーチだ。
「去年まではどちらかというとカット(するような打ち方)というか……。本人自体がそんなに長打を打つとか、バットを振って捉えるというアプローチをあまりしたくなかったような感じ。この体があって、スイングも速い。今年は自分のそういう長所を出している」
恵まれた体格とスイングを持ちながら、昨季は武器を封印するかのようにコンパクトな打撃に終始していた。明石コーチの言葉を借りれば、このオフで秋広は自らの長所を“解放”したのだ。
劇的な変化はどこから生まれたのか。その裏には、2人の偉大なる打者の存在があった。
まず1人目は、チームの主砲・山川穂高内野手だ。昨季終了後に行っていた自主トレで体重移動のノウハウを叩き込まれた。すり足だったフォームを足を上げるスタイルに改良し、下半身の力をバットに伝える土台を構築。スイングスピードの強さが生まれた。
さらに1月には、古巣・巨人の坂本勇人内野手のもとで自主トレに励んだ。通算2447安打、298本塁打を誇るレジェンドから打撃の極意を伝授され、これが秋広の打撃を根本から変えた。
「勇人さんから逆方向やセンターへの飛ばし方を教わったんです。バットの軌道というか、後ろから捉えにいかないと逆方向は飛ばないよ、と。勇人さんの逆方向のホームランって、基本後ろで捉えている。それを意識してからですね」
もともとダウンスイング気味で、上から叩く軌道になりやすかった秋広に、坂本はボールを後ろから捉えにいくイメージを授けた。
「僕はもともと上から行きやすいんで、それがうまくハマりました。アッパースイングではなく、後ろから通すイメージにしてから、センター方向に飛ぶようになりました。山川さんから体重移動を教わって、だいぶ強くなっていましたけど、それプラス勇人さん。2人に教えてもらって、ミックスさせて今の打撃になっています」
山川から得た体重移動と、坂本から授かったバット軌道。2つの技術が融合して打球の質が変わり、打席での意識にも好循環が生まれている。
「バッティング練習でも去年とかはバックスクリーンに入らなかった。ホームランを打ちにいくと、どうしても引っ張りになっていたけど、今はちゃんと当たればセンターにも入るので、体が開かなくていい。試合ではなかなか引っ張れるボールはないので。センターに入るようになったから、センターに打ちにいける。めちゃくちゃ良くなっている感じですね」
これまではフリー打撃でも、引っ張りにいかなければ柵越えにならなかったという。それが今は体の開きが抑えられ、角度もつくようになった。中堅や左翼のスタンドに打球が届くため、無理に引っ張る必要がなくなり、打撃の幅が広がっていく。技術の向上が打席での意識の変化を呼んでいる。
山川から体重移動を、坂本からバット軌道を――。2人の師匠から授かった技術の融合が、身長200センチの大器を覚醒へと導くか。コンタクトヒッターからアーチストへ。秋広優人の挑戦が、宮崎の地で続いている。