前田悠伍が迎える3年目「今年できないと怖い」 見比べる過去…スマホに並ぶ“1000の映像”

上茶谷大河(左)と前田悠伍【写真:飯田航平】
上茶谷大河(左)と前田悠伍【写真:飯田航平】

何度も見返した自身の投球フォーム

 どこまでも純粋に、そしてこれほどまでに高みを目指す左腕に期待が高まる。ホークスの次世代を担う前田悠伍投手は、オフ期間の自主トレを終えて、「対バッターで抑えないといけないですが、普通にやればいけそうな感じはしています」と、充実と自信にあふれた表情を見せた。

 驚かされたのはその徹底ぶりだ。昨年9月に左肘のクリーニング手術を受けた。「元々(のフォーム)が良くなかったので。ようやくやりたかったことができつつあります。キャンプ中もずっと繰り返していければ、球は確実によくなる」。肘に負担がかかりにくいフォームを追い求め、1球1球を動画に収めてきた。

 スマートフォンの共有アルバムに並ぶ、膨大な数の投球フォーム。高卒ながら“完成されたドラ1”という殻を自ら壊し、オフだけで1000本を超える動画を撮影。妥協することなく、理想とする姿と照らし合わせてきた。

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続きの内容は

前田悠伍が悟ったフォームの欠点
千賀滉大らと共有した「1000本の動画」の意図
「今年できないと怖い」と語った前田悠伍の覚悟

1000本もの動画が物語るもの

「えぐいほど撮りましたよ。キャッチボールもブルペンも、1球1球。メディシンボールや走り系も全部です。共有アルバムにあるだけで637本あるので、そこに入っていない分も含めたら、余裕で1000本は超えていますね」

 自主トレでは昨年同様にメッツ・千賀滉大投手に師事し、ロッテの種市篤暉投手、ホークスの大竹風雅投手と同じ時間を過ごした。その中で、前田悠は自らの肉体を徹底的に“解剖”した。撮影された動画は即座に自主トレ仲間に共有され、トップレベルの視線にさらされる。スマートフォンの容量がパンパンになることなど、些末な問題だった。

「以前のフォームは、全体で見たらまとまっている風でしたけど、タイミングも悪かったし、肘だけで投げていました。出力が出ない要素が全部詰まっていたんです。あれだと1軍では打たれるし、球速が出ても体が持たない。そこを変えないといけないと思っていました」

 1イニングを投げるだけで覚えた疲労感。その正体が「効率の悪さ」にあると気づいた。だからこそ、今年のキャンプに臨む姿勢は180度異なる。「悪いフォームで繰り返してもダメだし、悪い癖が染み付いていい出力が出なくなることもあるので」。もし、20球で感覚が狂えば即座にブルペンを離れ、ドリルに戻る。「数をこなすだけじゃ無理だということが去年の経験でわかったので、同じ失敗はしないようにしたいです」。その決断には、確固たる信念が宿る。

ローテ争い…「今年できないと怖い」

 肘への負担を軽減し、全身の連動で投げる新フォームに手応えも感じている。「千賀さんとずっとやって、良いフォームになったというか、前よりも肘に100パーセント負担がかかるフォームではなくなっています。その分、投げてもしっかりケアすれば大丈夫ですし、次の日も投げられる感じではあります」。

 有原航平投手という大黒柱が抜け、先発ローテーションの椅子を巡る争いは激化する。「食い込んでいかないといけないです。3年目なので『まだ大丈夫』とかは全然思っていないです。ここで掴めなかったらズルズルいきそうな感じがするんです。今年できないと怖いな、と思っています」。その言葉の端々に、20歳とは思えない覚悟が滲む。

 静かではあるが、重みのある言葉で締めくくった背番号41。1000本を超える動画を何度も見返し、確信を持って臨む春季キャンプ。今シーズンのマウンドでどのような進化を見せるのか。左腕の目にはその輪郭がくっきりと見え始めている――。

(飯田航平 / Kohei Iida)