転機は祖父の訃報…一瞬の出来事に「涙も出なかった」 有望株・藤原大翔が叶えたい約束

藤原大翔【写真:竹村岳】
藤原大翔【写真:竹村岳】

小久保監督も絶賛する逸材…昨年2月はA組に参加

「プロになれ」。口癖のように言われていた言葉は、今も鮮明に覚えている。野球人生の原点にあるのは、今は亡き家族との固い約束だ。「叶えたいなと思うようになりました」。決心したような真っすぐな表情で思いを語ったのは、育成の藤原大翔投手だ。

 福岡・行橋市出身。飯塚高から本格的に投手としてのキャリアを積み始め、2023年育成ドラフト6位指名を受けてプロ入りした。最速は155キロでスライダー、カーブ、チェンジアップを操る。昨年2月の春季キャンプではB組から始まるも、途中からA組に呼ばれ実戦登板を果たした。小久保裕紀監督が「元々A組スタートでもいいかなという話をしていた」というほど、首脳陣からの期待も高い。

 中学時代、投手としての経験は「バッティングピッチャーをやっていたくらい」だった。「上のレベルでやりたいとか、そういうのも全然なかったです。高校も『行けたらいいや』、みたいな。やる気はなかったかもしれませんね」。当時、上の舞台に対する意識は希薄だった。そんな右腕を変えた明確な出来事は、家族との“別れ”だった。

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続きの内容は

祖父の突然の別れに「涙も出なかった」衝撃の理由
地元強豪校への進学を決断させた父の「熱い一言」
ドラフト直前、藤原を襲った予期せぬ「アクシデント」の中身

プロになる…明確な目標が生まれた瞬間

「僕が高校2年生の秋、じいちゃんが亡くなったんです。ずっと『プロになれ』と言われていたんですけど、僕は『無理やろ』と思ってしまっていた。そんなに深く考えていなかったんですけど、じいちゃんが言ってくれていたことを叶えたいなと思うようになりました。それがなかったら(高校を卒業して)普通に働いていたかもしれないです」

 飯塚高では練習時、スマートフォンを回収される。「練習が終わって電話が返ってきたらお母さんからLINEが来ていて、(祖父の状態を)知りました」。寮生活を送っていたが、すぐに帰省。当時16歳の少年にとって、一瞬の出来事だった。ずっと背中を押してくれた家族の存在。あまりにも実感が湧かず「涙も出なかったんですよね」と振り返る。じいちゃんのためにも――。ぼんやりと過ごしていた日々に、プロという明確な目標が生まれた。

 幼少期から、家族との思い出は胸に刻まれている。野球を始めたのは、小学4年の頃だった。記憶に残っているのは夏休み。メガホンを手に、テレビに映る高校野球を眺めていた。「お父さんの実家が兵庫なので、甲子園に行ったこともあります。じいちゃんともキャッチボールをしていたので、『体験に行ってみるか』って感じで始めましたね」。赤色のグラブを買ってもらい、少しずつ野球の魅力に惹かれていった。

転機となった父の言葉「もっと強いところにいけ」

 中学3年となり、高校選びの時期に。当初、進路希望調査には、飯塚高と記していなかった。野球への情熱はそこまでなく、第3希望までに強豪校はなし。そんな中、父と2人きりの車中。助手席に座りながら、力強く背中を押されたことを今でも覚えている。「もっと強いところにいけ」――。当初の希望を翻して地元の強豪・飯塚高への進学を決断した。

「派手な色が好きなので。青色のユニホームが着たかったんですよね」。そんな少年らしい理由も、上を目指すモチベーションにつながった。胸元に「飯塚」と漢字で記された青色のユニホームを身にまとい、メキメキと実力をつけていく。高2の春の大会で、初めて背番号をもらった。「18番で、好きな番号だった。鏡で背中を振り返ってみていました」。

 ただ、最後の夏、福岡大会では5回戦で大牟田高に敗れた。先発を託されたが、初回から4失点を喫してしまった。「正直負けるとも思っていなかった。もう少し上までいっていたら悔しかったかもしれないですけど、あっさり終わったので何も感じなかったです」。調査書が届いていたのは、9球団。全国の舞台には立てなかったが、ポテンシャルを評価されて祖父の夢を叶えることができた。

「ドラフト当日は、支配下もあると言われていて期待していたんですけど。支配下5位くらいの時に、急に鼻血が出ちゃって、トイレから戻ってきたらもう育成の指名が始まっていました。それも全然呼ばれなくて焦り始めて……。最後の方は『来い、来い、来い』と思っていました。指名してくれたのが地元のホークスなので、それはやっぱり嬉しかったです」

 チーム内では前田悠伍投手、藤田悠太郎捕手らと同学年にあたる2005年世代。有原航平投手の移籍が追い風となり、限られた支配下枠を争う存在となるはずだ。「活躍できるように、頑張らないといけないです」。覚悟の3年目、家族のためにも必ず飛躍のシーズンにしてみせる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)