野村勇が単独トレを決断した理由 今宮健太の“答え”…18日間で目にした「厳しい現実」

甲賀スタジアムで自主トレする野村勇【写真:竹村岳】
甲賀スタジアムで自主トレする野村勇【写真:竹村岳】

2024年オフは今宮に弟子入り「ダメならクビになる」

 鷹フルでは、キャンプインに向けて自主トレを行うホークスナインの情報をお届けします。野村勇内野手の第2回は今宮健太内野手とのやり取り、そして滋賀県で自主トレを行なった理由について語りました。練習を共にした独立リーガーが向き合う厳しい“現実”を目の当たりにし、得た新たな価値観とは。「ハングリーにいかなあかんです」――。

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 目の色を変えてプロを目指す選手たちを見て、純粋に刺激を受けた。「ああ、こういう気持ちが大事なんやな」。プロ5年目の今シーズン、12月には30歳を迎える。滋賀での日々で思い出したのは、なりふり構わぬハングリーさだった。

 2024年、野村は自己最少の38試合出場にとどまった。わずか5安打、本塁打もゼロに終わり「ダメならクビになるだけ」――。少しでも自分を変えるために、弟子入りをお願いしたのが今宮だった。ひたすら振り込んだ日々は結果へと繋がり、2025年はキャリアハイの12本塁打、102安打を記録。チームにとって欠かせないピースへと成長した29歳だが、今も自分を突き動かしているのは強烈な危機感だ。

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続きの内容は

初の単独自主トレに込めた「期待の言葉」
仕事を切り上げ練習する選手から野村が得た「最も大事なこと」
自主トレ地について熟考…野村が明かした師匠とのやり取り

「あかんかったら終わりやから好きなようにやろう」

「去年は、『あかんかったら終わりやから、好きなようにやろう』と思っていたので。割り切れていたところはありました。もっとこうしよう、もっとトレーニングしようって考えられたので。(2024年シーズンを終えて)それまでは週に何回か、筋力を維持する程度だった筋トレも『もっとガッツリやろう』と。筋肉をつけるというよりも、メンタルを安定させるために頑張りました」

 5年ぶりの日本一に輝いた2025年。ポストシーズンで3本塁打を放つなど、最後まで野村の存在感は際立っていた。今オフはもう1度、今宮に自主トレをお願いしようとしたが、なかなか踏み出すことができなかった。自分1人だけでオフシーズンを過ごす。そう決意できたのは周囲の支え、そして大先輩から授かった言葉のおかげだ。

「僕が一番行きたかったのは今宮さんのところだったんですけど、『断られたらどうしよう』と思って、最初は頼めなかったんです。そこから(楽天の)村林とかと話をしていて、それ(断るかどうか)を決めるのは自分じゃないなと。ちゃんと『行きたいです』って伝えるべきだなと思いました」

 あらためて頭を下げると、今宮の答えは「1人で大丈夫だろ」――。師匠から直々に“卒業”を通達された。初の単独自主トレでテーマに掲げたのが、守備力の向上だ。「誰かのところだと『どこまでできるのかな』と思いました。何人かメンバーがいれば全体で動かないといけないですし、守備に関して本当に一からやりたかったので。それなら『1人でやろうかな』って」。

野村勇と日下部光氏【写真:竹村岳】
野村勇と日下部光氏【写真:竹村岳】

NTT西日本時代の同僚に「今も滋賀でやっていますか?」

 単独自主トレを決断し、連絡したのはNTT西日本時代のチームメートで、現在は独立リーグ「滋賀ハイジャンプス」で選手兼任監督を務めている日下部光氏だった。「今も滋賀でやっていますか?」。かつての同僚は、快く力を貸してくれた。甲賀スタジアムと草津グリーンスタジアムを拠点とし、6勤1休の18日間。みっちりと鍛錬を積み、キャンプインを迎えようとしている。

 昨年12月の契約更改で、野村は3100万円アップの5200万円でサインした(金額は推定)。3年ぶりの大幅アップを掴み取った29歳にとって、独立リーガーと過ごす日々は刺激と新鮮さの連続だった。「彼らはみんな、アルバイトをしているんです。だから途中で抜ける人もいれば、午前中に働いてから練習しにくる人もいます」。明かしたのは、選手たちが向き合う厳しい現実だった。

「シーズン中は給料が出るらしいんですけど、今は自主トレ期間やから当然無給じゃないですか。(ある日)1日中働く予定だったところを切り上げて、午後からグラウンドまで練習しにきた子がいました。僕の感覚やったら、絶対働いてお金をもらった方がいいと思うんですけど。そいつは『グラウンドを使って練習ができるんですよ!? そりゃ練習するでしょ!』って言っていたんです。ああ、こういう気持ちは確かに大事やなって思いましたね。がめつく、ハングリーにいかなあかんです」

 単独自主トレの経験は、かけがえのない財産となった。「死に物狂いでやります」。胸を張って、また必ず滋賀に帰ってくる。レギュラー争いに挑む野村は、絶対に“初心”を忘れない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)