現役ドラフトで佐藤直樹が楽天に移籍
たった一言のLINEで、全てを察した。大好きな先輩が、ホークスを去る。「もっと写真とか撮っておけばよかったですね」。寂しげに語るのは、今季から育成契約で再起を期す長谷川威展投手だ。現役ドラフトで楽天への移籍が決まった佐藤直樹外野手を送り出すため、“笑顔の絶えなかった”送別会が開かれた。
2023年の現役ドラフトで、日本ハムから加入した長谷川にとって、佐藤直は先輩以上の存在だった。最大の共通点は、周囲を楽しませる明るいキャラクター。「気づいたらお世話になっていましたけど。確か、僕から結構誘っていた気がします」。2人はすぐに意気投合した。
現役ドラフト当日。正式な結果発表が行われる少し前、長谷川に1通のLINEが届いた。そこに表示されたのは、あまりにも佐藤直らしく、そして今の長谷川にはあまりにも切ない「一言」だった。
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続きの内容は
・移籍を察した長谷川…佐藤直から届いたたった一言のLINE
・長谷川が「惚れた」、佐藤直の「揺るがない芯」
・苦悩から救われた長谷川、佐藤直が「オススメした一冊」とは?
現役ドラフトの結果発表“直前”…佐藤直樹から届いたLINE
「今までありがとう」
届いたメッセージには、こう記されていた。「移籍する球団も書いていなかったし、最初は『え?』と思いましたね」と、すぐには理解できなかったようだ。思わぬ形で訪れた“別れ”に「それはもちろん悲しいですよ」と声を落とす。
「おちゃらけた人に見えますけど、芯はすごくしっかりしているんです。そこが好きだったんですかね。ふざけているように見えても、ぶれないところに惚れていたんだと思います」
長谷川を救った佐藤直の言葉
2人の絆を深めたのは、昨季の苦難だった。3月に左肘のトミー・ジョン手術を受けた長谷川はリハビリ生活に突入。神経症状に襲われ、気分が落ち込む日も少なくなかった。暗闇にいた左腕を救い出したのが、佐藤直の言葉だった。
「『最近しんどいっす』みたいなことを話していた時に、直樹さんにいろんな話をしてもらって、薦められたのが『人生は気分が10割』という本でした。本当にその通りだなと」
昨秋、長谷川に突きつけられた構想外通告。再び育成からスタートすることを真っ先に報告したのも佐藤直だった。「『来年から育成になります』って言いました。直樹さんも同じで、這い上がって支配下になった。『お互い頑張っていこうや』って言ってもらえたことを覚えています」。その一言がどれだけ長谷川の支えになったか計り知れない。
感謝の思いも「なんかまとまらなかったんですよね」
佐藤直の移籍が決まり、感謝の思いをインスタグラムに綴ろうと、ソファで記憶を辿った。だが、指先は止まったままだった。「なんか、まとまらなかったんですよね。写真も探して、もっとあるはずなのに全然見つからなかったです。意外と思い出って、形には残していないんですね……」。少しだけ味わった後悔も、別れが教えてくれたことだ。
栗原陵矢内野手が主導して開かれた送別会。最後に出てきたケーキのプレートには「雨降って地固まる」の文字があった。「海野(隆司)さんが『お前にこの言葉贈るわ』って言いながら渡していて、直樹さんも『いい言葉すぎるわ!』って笑っていました」。ホークスを去る最後の最後まで、佐藤直樹は明るかった。
長谷川は今、40メートルのキャッチボールが行えるまでになった。少しづつではあるが着実に歩み始めている。背中を押してくれた先輩と1軍のマウンドで再会するために。
(竹村岳 / Gaku Takemura)