116番目の男・大山北斗の異色の経歴 勘違いから掴んだプロの夢…「サークルかと」

育成8位の大山北斗【写真:竹村岳】
育成8位の大山北斗【写真:竹村岳】

準硬式野球部から異例の指名…育成8位・大山北斗のルーツ

 2025年ドラフトでホークスは支配下選手5人、育成選手8人を指名しました。鷹フルではチームの未来を担うルーキーズを紹介します。今回は育成8位で入団した大山北斗投手。中大準硬式野球部出身という“異色の経歴”の持ち主。夢を掴み取るまでに様々な試練を乗り越えてきました。

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 野球は高校で辞めようーー。2021年夏、沖縄の名門・興南高で背番号10を背負い戦ったが、ベスト8で敗退。「もう野球に対しての情熱はなかったので」。多数の大学から声はかかっていたものの、高校野球で“燃え尽きた”大山に現役続行の考えはなかった。

 そんな気持ちを翻意させたのが、中大準硬式野球部の小泉友哉監督だった。3年春の段階からYouTubeなどで度々チェックしていたという“熱意”に胸を打たれ入部を決意。当初は軽い気持ちだったが、思わぬ結果を呼んだ。

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続きの内容は

体重不足を懸念された右腕が、短期間で体得した“秘策”
中継終了直前、116番目で掴んだ指名の瞬間
千賀滉大に続く…“最下位”から夢を追う右腕の「勝負」

「体育会ではなく、サークルかと思っていて……。野球で遊ぶくらいの感じをイメージしていました」。そんな気持ちで入部した大山は、すぐに大きな勘違いだったことに気付く。週7日の練習に過酷なラントレ。「入ったところを間違えたかな」。高校時代の2〜3倍は大変だったと語る日々。思わず“本音”が漏れた。

 さらに、準硬式球への適応に悪戦苦闘した。表面は軟式球と同じゴム製、中身は硬式球と同じ素材。柔らかいようで硬い、この“特殊な感触”への順応には1年近くを要した。

走り込み、食トレ…努力の末に高まる注目「もしかしたら」

 ひたすら走り込む日々にも負けず、地道な努力はやがて数字として現れる。高校時代141キロだった球速が、大学3年時には152キロを計測。「もしかしたらプロに行けるんじゃないか」。諦めかけていた“夢”を意識し始めるようになった。

 徐々に噂は広まり、スカウトが視察に訪れるようになった。プロへの思いが現実的になった一方で、当時、身長180センチに対し、体重は70キロを下回っていた。ドラフト会議まで半年に迫った大学4年の3月、スカウト側が体重不足を懸念しているという噂も耳にした。

 そこからは食トレに着手した。1日5食に増やし、常に満腹状態を維持した。わずか3か月で10キロの増量に成功。スケールを増した右腕に注がれる視線も熱を帯びていく。

指名を待ち続け4時間…掴んだ“最終指名”

 迎えたドラフト会議当日。大学の教室を貸し切り、チームメートとテレビ中継を見守った。「ダメ元で出しました。育成の上位でかかれば良いなと」。支配下指名はあっという間に終了。育成指名が始まると教室の緊張感が増していった。

 中継開始から4時間。時刻は20時を回った時、ついにソフトバンクから育成8位で指名を受けた。余韻に浸る間もなく、ドラフト会議は終了。実に116番目、2025年最後の指名選手となった。

「1番行きたかった球団。育成も上手なイメージがあります」。沖縄出身で幼いころから応援してきたソフトバンクからの指名。憧れは育成から世界に羽ばたいた千賀滉大(メッツ)だ。

 育成8位、準硬式野球部出身ーー。経歴や指名順位に劣等感は全く感じていない。「1年目は支配下枠を取りたいです」。“巨大戦力”の厳しい生存競争を戦う覚悟はできている。

(井上怜音 / Reo Inoue)