同学年がいなくなる現実…「この世界は容赦ない」 漁府輝羽が忘れぬ“最後の握手”

漁府輝羽【写真:竹村岳】
漁府輝羽【写真:竹村岳】

育成10位で入団…非公式戦では6本塁打を記録

 一緒にプレーしていた選手が、クビになって去っていく。プロとして当たり前の現実を目にして、背筋がピンと伸びた。「正直、まだまだダメなところばかりですけど、色々なことが経験できた1年間だったので。ここからのシーズンにつなげていけるように頑張っていきたいです」。育成選手として、ルーキーイヤーを終えた漁府輝羽外野手は静かな口調で1年間を振り返る。

 岡山出身で、藤井皓哉投手と同じおかやま山陽高に進学した。高校通算24本塁打を記録するなど、長打力が最大の武器。高3の夏の大会はコロナ禍で中止となってしまったが、甲子園で行われた合同練習会では本塁打も放った。進学した東北福祉大では公式戦でわずか4打席とチャンスに恵まれなかった一方で、オープン戦では10本塁打を記録。ポテンシャルを評価されて、2024年育成10位指名でホークス入りした。

 1年目の昨季は非公式戦でチームトップの105試合に出場。6本塁打を放ったが打率.156、127三振と確実性に課題を残した。「怪我なくできたのはよかったです。だけど、まだまだコンタクト率が低いので」。支配下枠の熾烈な競争。危機感を抱いたのが、同学年の選手が戦力構想外通告を受けたことだ。仲の良かった選手と交わした握手と、無念の表情が今も忘れられない。

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続きの内容は

【続きを読むと分かる3つのこと】
・構想外の戦友と交わした最後の「握手」と託された言葉
・若鷹寮のテレビで見た「トライアウト」での覚悟
・絶望から立ち直れた理由…監督・両親が贈った「運命の一言」

関係性が深かった川原田…戦力構想外の後にかけられた言葉

「プロの世界で、昨日まで一緒にやっていた人が急にいなくなるというのを初めて感じました。自分は大学からプロに入りましたけど、まだ育成という立場。時間がないとは思っていたんですけど、より一層厳しい世界であることを痛感して、もっとやらないといけないなと思った時期でした」

 昨季4軍を率いた大越基3軍監督は「村田(賢一投手)も、2年で戦力外になって育成になったでしょう。『来年自分たちもクビになるかも』って。漁府は目の色を変えてやっていますよ」と語っていた。ホークスを去る選手の中で、特に関係が深かったのは川原田純平内野手。「一緒に練習した次の日に『あれ? いない』となって。そしたら、彼に電話が来ていました」。その後、スーツを着た川原田はタマスタ筑後を訪れた。がっちり握手を交わし、伝えられた言葉は「ありがとう、頑張れ」――。

 川原田が参加した12球団合同トライアウト(マツダスタジアム)も若鷹寮内のテレビで見守り、球友が必死にプレーする姿を目に焼き付けていた。「その他にも、お世話になったコーチの方々も退団されました。朝練に行ったらそのコーチがいなくて、『いないってことは、そういうことや』って他の人に言われて……。この世界は容赦なんてあるわけないし、本当に今年結果を出さないといけないです」。今季が大卒2年目。覚悟を胸に、オフシーズンの鍛錬を積んでいるところだ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)