新幹線の車中で刻んだ悔しさ 大関友久の原点…“魂”と口にするようになった本当の理由

契約更改交渉に臨んだ大関友久【写真:竹村岳】
契約更改交渉に臨んだ大関友久【写真:竹村岳】

昨年末の契約更改は8000万円アップでサイン

 5年前、広島から福岡に戻る新幹線の車中で抱いた悔しさは今も忘れられない。3桁を背負ってプロの世界に飛び込み、タイトルホルダーにまで成長した。大関友久投手が口にしたのは、魂の投球の“原点”だった。

 プロ6年目の2025年は24試合に登板して13勝5敗、防御率1.66。自身初となる最高勝率のタイトルを手にすると、昨年末の契約更改では8000万円アップの年俸1億7000万円(金額は推定)でサインした。「大変嬉しいですし、ありがたいことです。人としても選手としても、もっと成長できるように」。“大台”を突破しても、向上心は絶対に忘れない。「目指したい場所がより明確になった。自分の中でも、いい循環が起きています」。交渉後の会見も充実感に満ちた表情が印象的だった。

 2019年育成ドラフト2位でホークスのユニホームに袖を通した。今ではチームに欠かせない存在となった左腕だが、その土台には3桁を背負っていた下積み時代がある。支配下を目指していたころ、どんな目標設定をして自分を高めてきたのか。「魂」が必要だと感じた、明確な“分岐点”を明かした。

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続きの内容は

帰りの新幹線で決意した「捨てた美学」
「魂」のルーツとなった学びと、そのきっかけ
メジャー挑戦を訴えた大関が記した「勝利数目標」

2021年にオープン戦を経験するも…防御率10.13で2軍降格

「3軍や2軍にいた時から僕は1軍を目指していましたし、ひたすら自分の能力を伸ばすことに集中していました。その時は工藤(公康)監督だったんですけど、ちょっとずつ力がついてきたところで1軍に呼んでもらいました。結局、その後にまた2軍に戻るんですけど、1度上の舞台を経験できたことが大きかったです。何がどれくらい足りていないのか、自分の中でもはっきりとしたので」

 2021年2月には育成ながら春季キャンプの途中からA組に合流。そのまま1軍に帯同し、3月のオープン戦でも登板を続けた。しかし、5試合に登板して0勝1敗、防御率10.13。最終戦となった同21日の広島戦(マツダ)でも1回2失点と結果を残せなかったが、左腕は前だけを向き、すぐに課題を明確にした。「遠征からの帰り道で考えていたんです」。最も大切にしている自らの理想像。その原点が、ここにあった。

「もっと魂を込めて投げないといけないなと感じました。当時はどちらかと言えば上手くやりたいだとか、綺麗に、おしゃれに投げたいみたいな部分があったんです。でもそういうことじゃないな、と。自分の全身全霊と言ったら大げさかもしれませんが、今まで野球をやってきた全ての力を試合で出さないと抑えられない。この世界で活躍するためには生半可なやり方じゃうまくいかないし、本気というか。そういうもので勝負しないと通用しないんだなと思いました」

契約更改交渉に臨んだ大関友久【写真:竹村岳】
契約更改交渉に臨んだ大関友久【写真:竹村岳】

「魂という言葉が自分には合うなと思った」

 13勝を挙げた2025年も、左腕は節目で「魂の投球」と口にしていた。4年前、オープン戦で結果を出せずに2軍降格となってからも「そういうことは考えてやっていましたね。その後は別の方向性に行ったりもしたんですけど、去年からスポーツ心理学を学び始めた。理想を考えたときに『魂』という言葉が自分には合うなと思ったことがきっかけです」。マウンドで自分が持っている全てを見せる。だからこそ大関が投げる1球1球は尊い。

 育成で入団して6年目。チームにとって絶対に欠かせない存在となった。支配下枠を勝ち取り、主戦へと成長を遂げたのは、野球に全てを費やしてきた大関の努力に他ならない。「いつか1軍で活躍するために、聞くことは大事にしていましたね。ちょっとでも疑問とか興味があれば聞きにいく。そうやって自分だけのスタイルが確立されるのかなと」。和田毅氏や千賀滉大投手(メッツ)、東浜巨投手ら、先輩の言葉にとにかく耳を傾けた。チャンスはどこかに転がっていると信じて、毎日を大切にして過ごしてきた。

 昨年末の契約更改で、左腕はポスティングシステムを利用した米大リーグ挑戦の意思をあらためて訴えた。「ホークスは世界一を目指している。もしポスティングすることと、そのビジョンが重なるのであればお願いしたいなと。自分もチームも、そしてファンもワクワクするような道を進んでいけたら」。大前提として、球団の理念と姿勢は尊重している。憧れる舞台に挑めるように、今は一歩ずつ鍛錬を積んでいくつもりだ。

 交渉には、シーズン中も必須アイテムだったノートを持参。見開きのページには「魂の投球!」という文字が書かれていた。「数字的なところを挙げるのであれば15から16勝くらいのイメージ。あくまでも目安として、それくらいのパフォーマンスを出せたらと思います。挑戦と、自分のスキルのバランスがあると思うので」。2026年、2年連続の日本一を達成するには大関の力が必要不可欠だ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)