前田悠伍「終わっていたかも」…救われた千賀の助言 突き付けられた手術後の“リスク”

トレーニングを行う前田悠伍(左)と千賀滉大【写真:竹村岳】
トレーニングを行う前田悠伍(左)と千賀滉大【写真:竹村岳】

千賀VS柳田の豪華共演にくぎ付け

「投げている姿を見たのは、初めてでした」。前田悠伍投手が振り返ったのは、今月19日の出来事だ。年の瀬の筑後で、2人のスターの“共演”が実現していた。リハビリ組が練習を終え、静まり返った室内練習場。そこに、メッツの千賀滉大投手と柳田悠岐外野手が姿を現した。

 福岡では年内最後のトレーニングとなった千賀はブルペンへ。そのとき打席に立ったのが、右腕と同期入団で盟友でもある柳田だった。豪華すぎる光景が広がる中、前田悠は指導を仰ぐ千賀の投球フォームにくぎ付けになっていた。「この12月に千賀さんが来てくれて良かった。そうじゃなければ、僕は終わっていたかもしれない」――。

 2026年を「勝負の3年目」と位置付けるサウスポーは、11月の左肘手術から復活途上。先代の背番号41からの助言が、完全復活のカギとなることを深く理解した。

 前田悠が千賀のブルペン投球で注視していたのは、「体の軸と、それに連動する体の使い方」だった。利き腕も体格も大きな違いがあるが「体の動きが良くないと良いボールは投げられないし、良いフォームでなければ球速は出ない」。力感たっぷりのストレートにカットボールやシンカー、そして海の向こうでも威力を発揮するフォークなど、メジャーの強打者たちを翻弄する豪腕の投球フォームを目に焼き付けていた。

クリーニング手術後に潜むリスク

 今年7月にプロ初勝利を挙げたが、11月には左肘の関節クリーニング手術を受けた。「もう痛かったので(骨棘を)取ったのは良かったけど、(肘を)綺麗にしたからこそ、今のうちにフォームを直さないといけない」。慢性的な痛みから解放されながらも、フォーム改善の必要性を強く感じたのは、メジャーリーグでの“現実”を耳にしたからだ。

「向こうでクリーニング手術をした人が、2年以内にトミー・ジョン手術をする割合は8割らしいです」。前田悠は痛みの原因だった骨棘が、肘にかかる負荷を受け止める役目を果たしていたとも語った。一時的に痛みがなくなっても、同じ投げ方をし続ければ肘にかかる負担は変わらず、受け止める骨がなくなっているため靱帯を痛めるリスクが高まるというのだ。

「もし12月に千賀さんと会っていなくて、(フォーム改造が)1月からだったら直らなかったと思う。このままシーズンに入ったら、もう終わるっていうのは分かっているので」

 ポイントは、テークバックから胴体が回転し始めるときの左腕の位置だ。「見てもあまり分からないと思います」という微妙な違いによって、体への負荷とボールへの出力が変わるという。「頭では分かっていても、小学生のころからの投げ方なので。相当意識しないと、その癖は抜けないです」。

 ただ、そう語る表情は晴れやかだ。現在は7割程度の力で投球ができるまでに回復し、来年1月には再び千賀と自主トレをともにする。長年の不安を取り除いた背番号41は、手術からの復活ではなく、進化を遂げて勝負の1年へ挑むつもりだ。

(鷹フル編集部)