自主トレに誘われて「マジですか?」 松本裕樹と岩井俊介…意外な2人を繋げた“人物”

契約更改に臨んだ岩井俊介【写真:竹村岳】
契約更改に臨んだ岩井俊介【写真:竹村岳】

契約更改に臨み現状維持の1500万円でサイン

 クールな29歳のセットアッパーと、周囲を明るく照らす24歳。対照的にも思える2人の接点は、どこにあったのか。自分が“いないところ”で名前が挙がったことが、嬉しかった。「アウトコース、ビタビタのストレートを学びたいです」。岩井俊介投手は11月26日、みずほPayPayドームの球団事務所で契約更改に臨んだ。現状維持の1500万円で来季の契約にサインした右腕が明かしたのは、松本裕樹投手から自主トレに「誘われた」背景だ。

 2年目の今季は1軍で8試合登板にとどまった。ウエスタン・リーグでは31試合に登板して2勝0敗2セーブ、防御率1.91。高いポテンシャルを秘めながらも、厚い選手層に阻まれたシーズンだった。「全然試合にも投げられなかったですし、現状維持でサインさせてもらえるだけありがたいです」。2026年が3年目となる右腕は、飛躍のヒントを必死に探しているところだった。

 栃木で行われる自主トレには岩井のほかに上茶谷大河投手と津森宥紀投手、西武の甲斐野央投手、巨人の泉圭輔投手らも参加する予定だ。1996年生まれの世代が多く集まった“チーム”を率いるのが、来季12年目を迎える松本裕。岩井が明かしたのは、「松本塾」結成の舞台裏だった。

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続きの内容は

・松本裕樹の自主トレに岩井を誘った「意外な人物」
・「松本塾」結成秘話、松本裕樹が明かした“先輩の責任”
・上茶谷が驚愕した、若鷹たちの「えぐい」意識の正体

松本裕樹から遠征先で「『飯行こう』って」

「みずほPayPayドームのブルペンだったと思うんですけど、マツさんと上茶谷さんが『自主トレどうする? どこでする?』っていう話をされていたんです。そこで『誰を誘う?』みたいになって、僕の名前が出たらしいです」

 岩井の名前を挙げたのは、今シーズン親交を深めた上茶谷だった。松本裕も「いいんじゃない?」と快諾したそうだ。「その後、かみちゃさんと会ったので。『マジですか? やりたいです!』って感じで僕から伝えました」。今季、最優秀中継ぎのタイトルを獲得した右腕のもとで鍛錬を積める。24歳の右腕にとっても貴重な機会になるはずだ。

 2年目を終えた岩井だが、松本裕に食事へ連れて行ってもらったこともある。ルーキーイヤーだった昨年から、ことあるごとに声をかけてもらった。「今年も北海道遠征で大山(凌)と僕が暇していたところに、『飯行こう』って誘ってもらいました」。ドラフト1位で入団し、プロ12年目を迎える松本裕も「上もだんだんと抜けてきましたし。責任感というか、中継ぎだと僕が(キャリアも)上の方なので。そういったところです」と理由を明かした。

上茶谷大河も移籍1年目…驚いたホークスの凄み

 上茶谷は新天地で1年目のシーズンを過ごした。昨年12月に行われた現役ドラフトでDeNAから移籍。明るいキャラクターで、一気にホークスにも溶け込んでいった。そんな右腕が驚いていたのは、若鷹たちのウエートトレーニングに対する意識の高さだった。「杉山(一樹)とかほんまにえぐいですよ。岩井も尾形(崇斗)も……。それは、こっちに来てめちゃくちゃビックリしました」。今年2月に右肘を手術したが、周囲から刺激を受けながら必死に球速アップを図ってきた。

 岩井にとっても、上茶谷は背中を追ってきた先輩の1人だ。「トレーニングとかも一緒にやらせていただく機会があって、一緒に追い込んできました」。思わず「仲間……仲間ちゃうな、先輩です」と“言い直す”ところにも関係性は表れていた。心からリスペクトするチームメートたちと、充実の自主トレを過ごすつもりだ。

「自分がいないところで名前が挙がって嬉しかったです。松本(裕)さんとかみちゃさんから話をもらったので。頑張ってきます」。テーマに掲げたのは、直球とスライダーをさらに磨くこと。層の厚い中継ぎ陣に、力強く食い込んでいく。来季こそ、勝負のシーズンだ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)