何度も聞かれた「上沢さんとやらないの?」 木村光があえて選んだ“自主トレ先”

木村光(右)と上沢直之【写真:竹村岳】
木村光(右)と上沢直之【写真:竹村岳】

木村光は今オフ、山岡との自主トレを選択

「めっちゃ聞かれました。『上沢さんとやらないの?』って」。そう笑って答えたのは木村光投手だ。今シーズンは後半戦で救援陣の一角に食い込むと、13試合で防御率1.02の好成績をマークした。オフにはオリックス・山岡泰輔投手の自主トレに初めて参加する。

 飛躍を遂げた25歳の右腕にとって、今季新加入した上沢直之投手の存在は何よりも大きかった。7歳上にも関わらず、日頃から優しい“兄貴分”として接してくれた右腕との距離はすぐに縮まった。シーズン中も何度も食事に出かけ、アドバイスをもらうことも多かった。

「普段から常に参考にさせてもらっていて、自分と上沢さんは考えが似てるところが多いんですよ」。そう信頼を寄せる先輩との自主トレをなぜ選ばなかったのか――。

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続きの内容は

【続きを読むと分かる3つのこと】
信頼する上沢ではなく、あえて山岡を選んだ木村光の「投手哲学」
好投の裏で木村が「課題」と認めた球種と克服への具体的な道筋
173cmの木村が、山岡から盗みたいと熱望する「体の使い方」

「ずっと同じ人に教わることも大事だと思うんですけど。別の意見を聞いてやることで違う視点からの自分も見えますし、レベルアップしやすいと思うんです」

 シーズン中は上沢から何度もアドバイスを受けてきた。キャッチボールでは“力を抜く”技術を教わり、疲労が溜まりやすい後半戦でのパフォーマンス向上につながった。その上で、あえて上沢との自主トレを選ばなかったのには木村光なりの哲学があった。

「人それぞれなので、自分はそういう考え方っていうだけなんですけど……。人によって同じこと言っていても、言い方が違うんですよね。全く同じ結論に至ることでも、過程が違うと自分に合う合わないが出てくる。自分にはこっちの方がわかりやすいってなるかもしれないし、そういう発見が見つかると思うんです」

木村光(左)と上沢直之【写真:竹村岳】
木村光(左)と上沢直之【写真:竹村岳】

救援転向で見えた課題「課題が出たので」

 今季はシーズン中に先発調整も行ったが、最終的に1軍では全て中継ぎで13試合に登板した。救援転向して球種を絞ることで、フォークと直球には手応えを感じた。一方で、課題はスライダーだった。山岡といえば、縦のスライダーが代名詞。クライマックスシリーズ前に自らお願いしに行った。

「後半にかけて真っすぐとフォークが良かったので、フォークで空振りを取れるっていうところはしっかり基準として。逆にスライダーの課題が出たので。山岡さんはスライダーめちゃめちゃいいので。体の使い方を学びたいなと思います」

 他にも木村光は身長173センチ、山岡も172センチとプロ野球選手としては小柄。「山岡さんは体が大きくなくても、使い方がうまいので。あえて違う人の意見も聞いてみたい」という理由もあった。

「上沢さんとはシーズン中、同じチームで話を聞けているので。違う観点から投球について感じたい」。別々のオフで上沢“先輩”に驚いた姿を見せられるように――。鍛錬の日々を過ごす。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)