2軍投手陣を総括「一番悔やまれるのは…」 川口冬弥の成長、求めた“ミリ単位”の修正

小笠原孝2軍投手コーチ(チーフ)【写真:加治屋友輝】
小笠原孝2軍投手コーチ(チーフ)【写真:加治屋友輝】

ホークスのコーチ2年目…課題に感じたことは?

 5年ぶりに日本一を掴み取ったホークス。鷹フルでは、首脳陣の言葉から2025年を振り返っていきます。小笠原孝2軍投手コーチ(チーフ)は、日本シリーズを見て感じた“明確な課題”を口にしました。2軍投手陣が1軍の戦力になるためには、何が必要なのか? 伊藤優輔投手や木村光投手らが“変化”を見せた瞬間。さらに川口冬弥投手に与え続けていた“ミリ単位”の課題も明かしました。

――小笠原コーチにとって、2025年シーズンはどんな1年だった?
「一番悔やまれるのは怪我人が多く出てしまったこと。あとはもう少し1軍に戦力となれる選手を送り出したかったですね。よかったことは、まだまだではありますけど課題に対して徹底できたこと。取り組むべきことを明確にしながらやれたのはよかったです」

――倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は、「選手層の厚さ」をテーマにしていた。そういう意味では、1軍の層は厚くできたのでは。
「まあ、そうですね。1人抜けても誰かがカバーというのは、一応できたので。そこはよかったのかもしれないですけど、もう少しこちら(ファーム)から(戦力になるような投手が)いってもよかったです」

――育成からは川口投手や宮崎颯投手が支配下登録された。前田悠伍投手は、2軍で46回2/3連続無失点とタイ記録を打ち立てた。印象に残っているトピックは?
「結局、支配下になって1軍に行ったとしても、すぐに(2軍へ)戻ってきていた。彼らも1軍の戦力になるために準備をしていましたけど、そこがもう少しでしたね。『今呼ばれても大丈夫か』ということを、もっと徹底してできたんじゃないかなと思いますけど」

高い評価を与えたのは伊藤優輔&木村光

――シーズン終盤では伊藤優輔投手や木村光投手が1軍でもチャンスを得ていた。小笠原コーチも高い評価を与えていた選手だった。
「優輔なんかは本当に、ずっと調子を維持していたので。いろいろと考えながら、しっかりと自分の真っすぐを投げられるようになっていたし、それはよかったと思いますね。ある時から急にフォームがコンパクトになって、そこからボールが変わっていったので。あれは印象的でした。光も、2軍に来た時から『自分の真っすぐはこうだから、こういうことに取り組む』というのを理解していました」

――そういう意味では、来年につながりそうなものが見つかったシーズンか。
「見つかっている人はいますね」

――印象に残ったシーンやプレー、出来事はある?
「2軍は今年タイブレークがあったじゃないですか(同点の延長10回は無死一、二塁からスタート)。川口や宮崎が、タイブレークで少し成長できたというのはあったと思いますね。ピンチの場面でどこを狙って、どんな投球をするのか。あと、倉野コーチから2軍のテーマとして与えられていたのは『回またぎ』でした。1軍に上がるにあたって、そこの注文は結構受けていましたね。そこの難しさは選手ごとにあったと思います」

「回またぎができる人はいいけど、2イニング目には球速が落ちたり、ランナーを背負ったらガラッと変わってしまったり。この回またぎというのは、全員が克服しないと1軍のメンバーには入っていけないので。日本シリーズの大事なところで(松本)晴や光はできていたし、与えられるのはそういう場面じゃないですか。だから2軍では当たり前のようにそれくらいの負荷とプレッシャーをかけて、来年はやってみようかなと思っていますね。きっとそうやっても、1軍では足りないくらいなので。監督、コーチ、コーディネーターと相談していきます」

来季のビジョン…短期決戦で感じた「重要性」

――川口投手はタイブレークでも結果を残していた印象がある。
「はじめは危なかったんですけどね。フォークを何球も続けるうえで、1球ごとの高さを数値で説明していました。どういうふうにリリースすれば、どんな軌道を描くのか。それを見せながら、理解させていたので。だから最初の甲子園(プロ初登板となった6月21日の阪神戦)でも、ぽんぽんと投げることができたわけだし。今はまだ体(腰痛でリハビリ中)のこともありますけど、そういうところまでできたらいいですね」

――あらためて「来年はこういうふうにしたい」と思い描いていることは?
「一番は、もっと負荷をかける。さっき言った、負荷にこだわりたい。最後の日本シリーズですごくそれを感じました。あんな緊迫した絶対絶命の場面で、リリーフなら回またぎで抑えなきゃいけない。先発はダメならすぐに代えられるという舞台ですし、最初からゲームを作らなきゃいけないプレッシャーもある。そういうところの重要性を感じたので。2軍ではそういった想定をしながらやっていきたいです」

(竹村岳 / Gaku Takemura)