進化する野球…勉強しないと「置いていかれる」
ホークスは7日、2026年シーズンの組閣を発表した。新たな陣営のもと、来季の連覇を目指していく。5年ぶりに日本一に輝いた2025年、鷹フルではコーチ陣にもスポットライトを当ててシーズンを振り返っていく。奥村政稔2軍投手コーチが語ったのは、若手投手の「打たれた後の姿」について。「一番許せないんです」ときっぱりと口にし、若鷹へ伝えたい思いを明かした。一問一答は以下の通り。
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続きの内容は
斉藤和巳監督の「我慢」の真意とは?
奥村コーチが許せない若鷹の「ある姿」
和巳監督を胴上げしたい「秘めたる夢」
――今季は3軍ファーム投手コーチという肩書きだった。どんなシーズンを過ごした?
「今年は3軍と2軍を行き来して、去年に比べたら試合数もかなり増えた。(試合中では)ベンチもブルペンも経験したし。斎藤和巳さんが監督の3軍と、松山(秀明)さんが監督の2軍で、全然違いました。ピッチャー出身か野手出身かで『別ものだな』と勉強になりました」
「今ホークアイ(ボールの軌道や球筋を分析する機器)ってあるじゃないですか。 そういうデータに詳しい人、2軍なら小笠原(孝)さんがいらっしゃるんですけど。今は数値で説明した方が入っていきやすい選手が多いんですよ。理解しやすい。めちゃくちゃ濃い1年、いろいろと勉強する1年だなという感じでした。 勉強していなかったら、どんどん今の野球に置いていかれる。それは現役だった時以上に感じます」
「選手もいろんな情報や知識を身につけている。これだけの人数がいて、みんな同じところに勉強しにいかないし、全員違う知識を持って練習している。全員のことを理解してやらないといけないっていうか。『この選手は何を言ってるんだろうな』と思った時点でこちらの負けなので。そうならないようにしたいですね」
斉藤和巳監督から教えてもらったのは“我慢”
――投手出身の斉藤監督から感じたことは?
「和巳さんは我慢してくれますね。フォアボール3つのノーアウト満塁になっても1点取られるまでは投げさせたりとか。監督が我慢をしてくれると、ブルペンで肩を作らせていてもバタバタしませんでした。ピンチになったらすぐ代える。それを繰り返していると、選手にも“交代癖”がつくんですよね。すぐにブルペンの方を見るようになる。自分でピンチを作ったんだったら、ゼロに抑えればいいんですよ。そういうところで力を出せる選手になってほしいですね」
――1年間を通して印象に残った出来事は?
「いろいろあるんですけど、一番言っていることがあります。3点取られて交代した選手がベンチに帰ってきてヘラヘラしている。それが僕は一番許せない。自分がやられてピンチを作ったら、誰かが代わりに抑えに行ってくれているわけじゃないですか。それに対して、まずは応援しないといけない。そこを抑えた後も、自分が与えてしまった点数を野手が必死になって取り返そうとしてくれる。だから、代わった選手にできることって、応援することだけなんですよね」
「それをおざなりにしていると、そういう姿を野手は絶対に見ているので。『こいつが投げている時は、球際でもう一歩頑張ってやろうと思ってもらえる投手になれ』とは言っています。だからベンチに戻ってきたら大きい声を出さないといけないし、『応援しなさい』と言い続けてきました」
「だけど、みんな照れ隠しがあるんだと思います。本当は笑いたくないけど笑ってしまったり。その場でやられたことが恥ずかしくて、隠そうとする。だけどそれはマイナスにしかならないし、なくしていこうという話はしました。改善してきた選手もいるんですけど、まだヘラヘラしてしまう選手もいますね。そういうところもできるようになってほしいです」
――1軍だと上沢直之投手らが示していた姿。
「若い選手の誰に聞いても、上沢の名前は挙がりますね。年齢や経歴も含めて、本当に分け隔てなく話してもらえるっていうのは僕も何度も聞いたことがあります」
自主トレをともにした森唯斗が現役を引退
――DeNAの森唯斗投手が現役を引退。自主トレをともにした奥村コーチが森投手から学んだこと。
「森さんもそれはずっと言い続けていましたね。そういうホークスのいい伝統っていうのは、受け継いでいかないといけないし、それはコーチになった今でも、伝えていかないと」
――森投手の引退は、奥村コーチにとってはどんなニュースだった?
「あれだけ真っすぐも速くて、カットボールも交えて押して投げていた人が、だんだん球速も落ちてきた。一番よかった時のイメージを捨てられなくてずるずるいってしまう選手もいるんですけど、森さんは生き残るために必要なことは全部やったと思う。そこは心から尊敬しています。あれだけ球が速かった人がスタイルを変えてまで勝負していた。あがいていたところは本当に見習わないといけないです」
――来季は2軍で投手コーチ。斉藤2軍監督のもと、指導者をすることになった。どんなシーズンにしたい?
「冗談半分でしたけど、4軍だった時から『和巳さんの右腕になれるように』って言っていたんです。『まだまだ小指の爪くらいにしかなっていないぞ』と言われていたんですけど。2軍になるとまた1勝の重みも変わってくる。ピッチャーのところではしっかりと頼ってもらえるように。この選手のことは奥村に聞いたらわかるよな、と。そうなれるように常に勉強しないといけないです。2軍の場合は、優勝すれば胴上げがあるじゃないですか。選手の育成が一番大事ですけど、やるからには1位になって、和巳さんを胴上げしたいです」
(竹村岳 / Gaku Takemura)