柳田からの“メッセージ”に「本当にすごいなって」
これぞスターという一発だった。30日に行われた阪神との日本シリーズ第5戦、8回に柳田悠岐外野手が起死回生の同点2ランを放った。2年連続で怪我に泣いた主砲が、大一番でチームを救った。
そして5年ぶりの日本一を決めたこの一戦。試合後、柳田の口から真っ先に飛び出したのは、リハビリ生活を支えた筑後のスタッフへの“感謝と責任”の言葉だった。
「やっぱり筑後の皆さんにも喜んでいただかないとダメっていう責任があったので。本当に筑後の皆も喜んでくれていると思います」
翌日、タマスタ筑後を訪れると柳田からの1通のメッセージがあるスタッフの元に届いていた――。シーズンが終わり、勝利の美酒に酔った翌日でも変わらぬ、スターの行動がそこにはあった。
会員になると続きをご覧いただけます
続きの内容は
柳田選手が送った「感謝の言葉」の全貌
4か月半のリハビリを支えたトレーナーが見た姿
日本一を決めた一発に込められた「特別な想い」の真実
「ありがとうございます。お世話になりました」
日本一から一夜明けた午前11時ごろ、柳田からメッセージが届いた。その事実を明かしたのは、2年連続で過酷なリハビリをそばで見守った有馬大智アスレチックトレーナーだった。
「昨日のあのどんちゃん騒ぎの後ですよ。きょうはもうゆっくり何も考えず……というところだと思うんです。でもそんな中、『ありがとう』という言葉をくれる。本当にすごいなって思いました」
たった一言、二言。しかしそのメッセージに改めて心を揺さぶられた。「彼、そんなに文章を打つタイプじゃないと思うんですよね。でも、この節目だからわざわざ送ってくれたんだなと思って」。長いリハビリ生活を共にした自分のためにしてくれた行動が、素直にうれしかった。
柳田が常に示してくれる言葉と行動
4か月半にも及んだ長いリハビリ期間中も、柳田は周囲への感謝を忘れることはなかった。有馬トレーナーも「選手に対しても、トレーナーに対しても、スタッフに対しても、常に感謝の気持ちを持っていて、行動や言葉にしてくれるんです」と、その姿に驚きを隠さない。地道なトレーニングの日々も、トレーナーの意見を最大限に受け入れ、丁寧な対話を重ねながら乗り越えた。
柳田が示す“感謝の想い”は常に一貫していた。クライマックスシリーズ・ファイナルステージ第2戦で決勝3ランを放った後もこう語っている。
「筑後で僕のことをサポートしてくださった人がいっぱいいたんで。そういう人のためにも、僕が結果を残すっていう気持ちではずっといます」
有馬トレーナーは、今年でホークス2年目を迎えた。「私がホークスに来て2年間。そのほとんどが怪我と闘う姿しか見ていなかったので。だからこそ今回、試合でああいう姿を見られたことが本当にうれしかった。改めて、すごい選手だなと感じました」。日本一の輪の中心にいる柳田の姿を、心から喜んだ。
柳田悠岐が放った起死回生の一発。それは支えてくれたすべての人への想いが描かせた放物線だったのかもしれない――。
(森大樹 / Daiki Mori)